介護保険の住宅改修とは?対象6種類・20万円上限・申請手順を社会福祉士が解説の巻

介護に関する知識や考え方

自宅に手すりを付けたい、浴室や玄関の段差をなくしたいと思っても、先に工事を始めてはいけません。介護保険の住宅改修費は、原則として着工前と工事後の両方で市区町村へ申請する制度だからです。

住宅改修は「20万円がもらえる制度」ではなく、対象工事費20万円を上限に、所得等に応じた7~9割が介護保険から支給される制度です。工事の必要性、対象範囲、書類、支払方法は自治体で確認し、着工前にケアマネジャー等へ相談します。

私は社会福祉士として、高齢者本人と家族の生活相談に関わってきました。住宅改修は、手すりを付ければ終わりではありません。本人の動作、転倒状況、介助者の負担、福祉用具、病状の変化まで確認し、必要な場所へ必要な工事を行うことが大切です。

この記事の結論:契約・着工前に、ケアマネジャー、地域包括支援センター、市区町村等へ相談してください。対象工事は6種類、支給限度基準額は原則1人・1住宅20万円です。事前申請の確認は最終的な支給決定ではなく、工事後の書類提出と自治体の審査を経て支給が決まります。

制度・出典の最終確認:2026年7月18日。自治体独自の様式・助成・受領委任払い等があるため、必ず工事前に住所地の市区町村へ最新情報をご確認ください。

介護保険の住宅改修を利用できる人と住宅

原則として、要支援または要介護の認定を受けた人が、介護保険被保険者証に記載された住所の住宅で、自立した生活や介助負担の軽減に必要な改修を行う場合が対象です。

  • 要支援1・2または要介護1~5の認定を受けている
  • 本人が現に暮らす住宅の改修である
  • 本人の心身状態と生活動作から必要性が説明できる
  • 介護保険の対象となる種類の工事である
  • 原則として着工前に自治体へ必要書類を提出する

認定申請中、入院・入所中、退院前の工事は扱いに注意が必要です。やむを得ない事情がある場合の手続きもありますが、自己判断で着工せず、自治体と病院の相談員、ケアマネジャー等へ事前に確認してください。認定結果や退院状況によっては給付されない可能性があります。

賃貸住宅や、本人以外の家族が所有する住宅では、所有者の承諾書が必要です。管理規約や原状回復条件も先に確認します。

介護保険で対象になる住宅改修6種類

対象工事具体例確認点
1. 手すりの取付け玄関、廊下、階段、トイレ、浴室握る高さ・位置・向き、下地補強
2. 段差の解消敷居撤去、床かさ上げ、固定スロープ新たなつまずき、扉、排水への影響
3. 床・通路面の材料変更滑りにくい床材、移動しやすい床材車いす・歩行器、掃除、濡れた状態
4. 扉の取替え開き戸から引き戸・折れ戸へ変更有効幅、取っ手、開閉する力
5. 便器の取替え和式から洋式便器等への変更立ち座り、移乗、手すり、排水
6. 付帯して必要な工事手すりの壁補強、扉取替えに伴う壁・柱工事等対象工事との関係を見積書で分ける

工事名だけで自動的に対象になるわけではありません。本人の状態、住宅の構造、工事の必要性、自治体の確認により判断されます。

浴槽交換は一律に対象外ではない

浴槽交換やユニットバス全体の入替えを「すべて対象外」とする説明は正確ではありません。厚生労働省のQ&Aでは、浴槽の深さや縁の高さなどを適切にし、入浴時の段差を解消するための浴槽取替えを、対象として扱える場合が示されています。

  • 浴室床と浴槽底の高低差を改善する
  • 浴槽の縁の高さを改善し、またぎ動作を安全にする
  • 床のかさ上げ後に必要となる浴槽のかさ上げ・取替え

一方、老朽化、デザイン、快適性だけを理由とする全面改装や、対象工事と関係のない設備は給付されません。ユニットバス工事では、対象部分と対象外部分を見積書で分け、必要に応じて按分します。工事前に自治体へ図面と内訳を示して確認してください。

対象外になりやすい工事

  • 住宅の新築
  • 新しい部屋を増やす増築部分
  • 老朽化だけを理由とする修繕
  • 本人の生活動作と関係のない改装
  • 対象工事と切り分けられない過剰な設備・内装
  • 持ち運びが容易な用具で、福祉用具購入・貸与として扱うもの
  • 着工前の手続きをせず、やむを得ない事情も認められない工事

増築や全面改装と一緒に手すり取付け等を行う場合、対象部分だけが給付対象になり得ます。材料費、施工費、諸経費を分けた見積書を用意します。

20万円上限と自己負担の計算

支給限度基準額は、原則として要介護度にかかわらず1人につき20万円です。対象工事費の7~9割が支給され、1~3割を本人が負担します。

対象工事費負担割合介護保険からの支給本人負担
20万円1割18万円2万円
20万円2割16万円4万円
20万円3割14万円6万円

「1割負担なら2万~6万円」ではありません。対象工事費が20万円なら、1割負担は2万円、2割は4万円、3割は6万円です。

対象工事費が26万円の架空例

対象工事費が26万円で、20万円の枠を初めて使う場合、超過した6万円は全額自己負担です。

負担割合20万円部分の本人負担上限超過分合計本人負担
1割2万円6万円8万円
2割4万円6万円10万円
3割6万円6万円12万円

対象外工事が含まれる場合、その部分も全額自己負担です。自治体独自の助成制度が使えることもあるため、介護保険を優先したうえで確認します。

20万円は複数回に分けて使える

20万円の枠は、1回で使い切る必要はありません。最初に対象工事費8万円を使った場合、原則として残り12万円の範囲で次の住宅改修を申請できます。ただし、工事のたびに必要性を確認し、事前・事後の手続きを行います。

「将来使うかもしれないから」と必要性の低い工事までまとめるより、身体状況の変化を見ながら優先順位を決めます。ただし、工事を分けることで施工費が増える場合もあるため、専門職と比較します。

転居・要介護度上昇で20万円枠が再設定される場合

次の場合、例外的に改めて20万円まで利用できることがあります。

転居した場合

現に居住する住宅ごとに限度額を管理するため、別の住宅へ転居した場合は、新しい住宅で改めて支給限度基準額まで申請できることがあります。以前の住宅へ戻った場合の扱いなどは自治体へ確認してください。

介護の必要の程度が3段階以上上がった場合

最初に住宅改修費の支給を受けた工事の着工時点と比べ、国の区分表で3段階以上上がり、その後初めて住宅改修費を申請する場合は、改めて20万円まで利用できる特例があります。この取扱いは原則1回限りです。

  • 要支援1から要介護3以上
  • 要支援2または要介護1から要介護4以上
  • 要介護2から要介護5

要支援1から要介護2は、国の区分では3段階上昇ではありません。単純に認定名の数字だけを数えず、最初の工事時点の区分を自治体へ確認します。

住宅改修の申請から支給までの8ステップ

  1. 困っている動作を整理する
    場所だけでなく、立つ、座る、またぐ、方向転換する等の動作を確認します。
  2. ケアマネジャー等へ相談する
    担当がいない場合は、地域包括支援センターまたは市区町村へ相談します。
  3. 現地で専門職と確認する
    必要に応じて理学療法士・作業療法士、福祉用具専門相談員、施工業者等と動線を確認します。
  4. 福祉用具と工事を比較する
    固定工事、貸与、購入の安全性・費用・将来の変更しやすさを比べます。
  5. 見積書・理由書等をそろえて事前申請する
    材料費、施工費、対象外部分を分けます。
  6. 自治体の事前確認結果を受けてから着工する
    これは工事後の最終的な支給決定とは異なります。
  7. 工事後に動作と安全を確認する
    高さや位置が本人に合うか、別の危険が生じていないか確認します。
  8. 領収書・内訳書・完成写真等を提出する
    自治体が事前申請との一致を確認し、支給を決定します。

工事前・工事後に必要となる主な書類

時点主な書類注意点
工事前申請書、住宅改修が必要な理由書、見積書、工事前写真、図面等材料・施工・諸経費、対象箇所を明確にする
所有者が別住宅所有者の承諾書賃貸・家族所有でも必要
工事後領収書、工事費内訳書、改修前後の写真等写真は原則として撮影日が分かるようにする

自治体により様式や追加書類が異なります。施工業者任せにせず、本人・家族も申請書、見積書、写真、領収書の控えを保管します。

償還払いと受領委任払いの違い

方法工事時の支払い注意点
償還払いいったん工事費全額を払い、支給決定後に保険給付分を受け取る一時的に全額を用意する必要がある
受領委任払い本人は原則として自己負担分を払い、保険給付分を自治体から事業者へ支払う自治体・登録事業者等により利用可否が異なる

全国すべての自治体・事業者で受領委任払いを使えるわけではありません。契約前に自治体と事業者の両方へ確認します。

固定工事と福祉用具を比較する

住宅改修は固定されるため、身体状況が変わっても簡単に位置を変えられません。工事だけを前提にせず、福祉用具貸与・購入と比較します。

選択向きやすい場合注意点
固定手すり等の住宅改修使う位置が明確で、長期的に必要下地、位置変更、賃貸の承諾
据置型手すり等の貸与状態変化に合わせて調整・交換したい設置スペース、月額、対象条件
入浴補助用具等の購入浴槽・浴室内の動作を補助したい身体適合、対象商品、申請方法

浴室内すのこなどは、工事ではなく特定福祉用具購入として扱う場合があります。どの制度に該当するか、購入・工事前に確認してください。

社会福祉士として確認したい生活動作

  • いつ、どこで、どの動作に困るのか
  • 過去の転倒・ヒヤリハットはどこで起きたか
  • 本人は左右どちらの手で支えるか
  • 靴、杖、歩行器、車いすを使った状態で動けるか
  • 介助者はどこに立ち、どの動作を手伝うか
  • 夜間、濡れた床、急いでいるときも安全か
  • 病気やリハビリで状態が変わる見込みはあるか
  • 認知症がある場合、手すりや扉を理解して使えるか
  • 本人と家族の希望が一致しているか

「玄関に手すりを付ける」ではなく、「玄関で靴を履いて立ち上がるとき、右手で支えられる場所が必要」のように、動作で説明すると工事目的が明確になります。

3つの架空例

以下は判断手順を示すための架空例です。

例1|玄関の手すりを急いで付けようとした

家族が施工業者へ直接依頼する前に、ケアマネジャーと動作を確認しました。立ち上がり、段差、靴の着脱で必要な支えが違うと分かり、手すりの位置と式台、福祉用具を比較してから事前申請しました。

例2|浴槽交換は対象外だと思っていた

浴槽の縁が高く、またぎ動作が危険でした。浴槽の形状変更が段差解消として扱える可能性があるため、浴室全体の改装費から対象部分を分け、自治体へ事前確認しました。

例3|退院日に間に合わせるため先に着工しようとした

病院の相談員、リハビリ職、ケアマネジャー、自治体へ早めに連絡し、退院後の動作と手続きを確認しました。やむを得ない事情の扱いは自治体判断になるため、口頭だけでなく必要書類と手順を確認して進めました。

よくある質問

工事後に申請しても支給されますか?

原則として着工前の申請が必要です。やむを得ない事情が認められる場合もありますが、自己判断は避け、工事前に自治体へ相談してください。

20万円を現金でもらえますか?

いいえ。対象工事費20万円を上限として、その7~9割が支給される制度です。本人は1~3割と、上限超過・対象外部分を負担します。

要介護度が変われば毎回20万円へ戻りますか?

戻りません。通常の区分変更では残額を引き継ぎます。国の段階で3段階以上上がった場合の特例は原則1回です。

自分や家族で工事した場合も対象ですか?

本人や家族が工事する場合、対象となる材料購入費が支給対象になり得ます。工賃は対象にならず、必要書類も省略できません。購入前に自治体へ確認してください。

ケアマネジャーがいない場合はどこへ相談しますか?

本人の住所を担当する地域包括支援センターまたは市区町村の介護保険窓口へ相談します。理由書を作成できる人や手続きも案内してもらいます。

まとめ|着工前に動作と制度の両方を確認する

  • 対象は要支援・要介護者が現に暮らす住宅の必要な改修
  • 対象工事は手すり、段差、床材、扉、便器、付帯工事の6種類
  • 浴槽交換も段差解消として対象になる場合がある
  • 支給限度基準額は原則1人・1住宅20万円
  • 20万円工事の本人負担は1割2万円、2割4万円、3割6万円
  • 原則として着工前と工事後の両方で申請する
  • 事前確認は工事後の最終的な支給決定ではない
  • 3段階上昇の特例は国の区分表で判断し、原則1回
  • 固定工事だけでなく福祉用具貸与・購入とも比較する
  • 工事場所ではなく、困っている生活動作から考える

最初の連絡先は、担当ケアマネジャーです。担当がいない場合は、地域包括支援センターか市区町村へ「介護保険で住宅改修を考えている。まだ着工していない」と伝えてください。

あわせて確認したい記事

主な参考情報

本記事は一般的な情報提供を目的とし、個別の工事や施工業者を推奨するものではありません。対象工事、必要書類、支払方法、独自助成は自治体と個別事情で異なります。必ず契約・着工前に市区町村、ケアマネジャー、地域包括支援センター等へ確認してください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました