訪問入浴介護とは?料金・利用条件・当日の流れ・ほかの入浴支援との違いの巻

介護に関する知識や考え方

自宅のお風呂に入ることが難しくなっても、清潔を保つ方法は一つではありません。専用浴槽を持ち込む訪問入浴介護のほか、自宅浴室での訪問介護、デイサービスでの入浴、清拭・部分浴を本人の状態と住環境に合わせて選べます。

私は地域包括支援センターで10年以上、高齢者と家族の相談支援に携わる社会福祉士です。この記事では、訪問入浴介護の対象、職員体制、2026年7月18日時点の料金、当日の流れ、医療機器や褥瘡がある場合の注意、事業所選びまでを、公的情報に基づいて解説します。

先に結論を言うと、自宅の浴槽を使えず、移動や姿勢保持に多くの介助が必要なら訪問入浴介護が候補です。自宅浴室を安全に使えるなら訪問介護、外出できて一日の支援も必要ならデイサービス、全身浴の負担を避けたい日は清拭・部分浴も比較します。

訪問入浴介護とは?持参した浴槽で入浴を支えるサービス

訪問入浴介護は、看護職員と介護職員が利用者の自宅を訪問し、事業所が持参した専用浴槽を居室などに設置して入浴を介助する介護保険サービスです。自宅の浴室まで移動することや、浴槽をまたぐことが難しい人でも、自宅で全身浴できる可能性があります。

入浴前後の体調確認、脱衣・着衣、浴槽への移動、洗髪・洗身、入浴後の片付けまでが一連のサービスです。訪問入浴の看護職員は体調を確認しますが、訪問看護と同じように、希望する医療処置をすべて行うサービスではありません。必要な処置は主治医の指示と事業所の対応範囲を確認します。

厚生労働省|介護サービス情報公表システム「訪問入浴介護」

利用対象|要介護と要支援で条件・職員体制が異なる

項目訪問入浴介護介護予防訪問入浴介護
主な対象要介護1~5要支援1・2のうち、疾病などやむを得ない理由で入浴介護が必要な人
標準の訪問体制看護職員1人+介護職員2人看護職員1人+介護職員1人
基本報酬1,266単位/回856単位/回
全身浴が難しい場合本人の希望により清拭・部分浴へ変更できる場合がある同左

要支援1・2だから自動的に利用できるわけではなく、自宅に浴室がない、感染症などで施設浴を使いにくいなど、やむを得ない理由と入浴介護の必要性を個別に検討します。ケアプランへ位置づけるため、担当の地域包括支援センター等に相談してください。

看護職員が同行しない場合もある

原則は上の標準体制ですが、利用者の状態が安定し、主治医の意見を確認した場合には、要介護者は介護職員3人、要支援者は介護職員2人で実施する取扱いがあります。この場合は基本報酬の95%です。単なる人手不足を理由に看護職員を外す仕組みではありません。

看護職員の同行を特に希望する場合や、医療機器、創傷、体調変動がある場合は、契約前に職員体制と主治医への確認方法を質問しましょう。

訪問入浴・訪問介護・デイサービス・清拭を比較

方法場所・方法合いやすい状況確認点
訪問入浴介護居室などに持参浴槽を設置自宅浴室への移動や浴槽のまたぎが難しい。寝た状態から多くの介助が必要搬入、設置場所、給排水、駐車、医療対応
訪問介護の入浴介助原則として自宅の浴室を使用自宅浴室を安全に使え、必要な介助を訪問介護で組める段差、手すり、福祉用具、介助人数
デイサービスの入浴施設の一般浴・個浴・機械浴など送迎で外出でき、食事・活動・機能訓練など一日の支援も必要送迎介助、浴槽設備、個別対応、待ち時間
清拭・部分浴ベッド上などで体を拭く、手足や一部を洗う全身浴の負担を避けたい日、入浴できない期間、本人が全身浴を望まない場合実施者、皮膚観察、保温、創傷の扱い

清拭は、訪問入浴や訪問介護と並ぶ独立した介護保険サービス名ではありません。訪問介護の身体介護に含める場合や、訪問入浴当日に全身浴から清拭・部分浴へ変更する場合があります。実施内容と料金は、ケアマネジャーと事業所へ確認してください。

訪問介護のサービス範囲は訪問介護(ホームヘルプ)とは?できること・できないこと・料金・利用方法の巻、通所での入浴を含むサービスはデイサービス(通所介護)とは?対象者・サービス内容・料金・選び方の巻で詳しく解説しています。

どの方法が合う?5つの順番で考える

  1. 本人は湯船につかることを望んでいるか
    羞恥心、疲れ、入浴後の過ごし方も含め、全身浴を当然の前提にしません。
  2. 送迎で安全に外出できるか
    入浴以外の通所サービスも必要ならデイサービスを比較します。
  3. 自宅浴室まで移動し、浴槽を使えるか
    手すり、入浴用いす、浴槽台、住宅改修で安全になる場合があります。
  4. 持参浴槽なら入浴できそうか
    ベッドからの移動に複数職員が必要な場合は訪問入浴が候補です。
  5. 全身浴の負担を避ける必要があるか
    体調や主治医の方針により、清拭・部分浴を選べるようにします。

本人の普段の移動方法、座位を保てる時間、入浴後の疲れ、医療機器・処置、家の間取りをケアマネジャーへ伝えると、比較しやすくなります。相談の進め方はケアマネジャーとは?役割・相談のコツ・担当変更の手順を社会福祉士が解説の巻も参考にしてください。

訪問当日の流れ

  1. 到着・情報共有
    食事、水分、睡眠、排泄、痛み、呼吸、皮膚、服薬、前回入浴後の変化を伝えます。
  2. 体調確認と入浴方法の決定
    本人の様子を確認し、必要に応じて体温、血圧、脈拍などを測ります。
  3. 浴槽と給排水設備の準備
    浴槽を搬入し、床を保護し、給湯・給水・排水の配管を行います。
  4. 脱衣・浴槽への移動
    本人の状態に合わせ、複数の職員で安全に介助します。
  5. 洗髪・洗身・入浴
    表情、呼吸、疲れ、皮膚の状態を確認しながら行います。
  6. 浴槽から移動・着衣
    体を拭き、着替え、整髪などを行います。外用薬や創傷処置の担当は事前に決めます。
  7. 入浴後の体調確認・片付け
    本人の状態と皮膚の変化を共有し、浴槽や機材を片付けます。

所要時間、入浴時間、順序は事業所と本人の状態で異なります。「1回○分」と決めつけず、初回前に予定時間と、本人が疲れたときの短縮方法を確認してください。

自宅で確認する設置場所・給排水・駐車

浴槽を置く場所と搬入経路

  • ベッドの近くなど浴槽を置く候補場所
  • 玄関、廊下、曲がり角、階段、エレベーターの幅
  • ベッドと浴槽の間で職員が動ける範囲
  • 家具の移動、床の防水・養生方法
  • 室温、換気、本人のプライバシー

必要な広さや搬入条件は、浴槽・機材によって異なります。「部屋が狭いから無理」と家族だけで判断せず、間取りや写真を見せて事業所に実測してもらいます。

給湯・給水・排水

  • どの水道・給湯設備を使うか
  • 事業所の車両でお湯を用意するか、自宅の給湯を使うか
  • 排水先をどこにするか
  • ホースを通す経路と水漏れ・転倒対策
  • 水道、ガス、電気の使用と費用の扱い

方式は事業所ごとに違います。家族が事前にホースやポンプを購入する必要はありません。井戸水、特殊な給湯器、排水制限がある住宅は早めに伝えます。

駐車と集合住宅のルール

  • 入浴車・機材車を玄関近くに止められるか
  • 車高・車幅制限や進入禁止時間がないか
  • 有料駐車場を使う場合の料金負担
  • 管理者への連絡、搬入用エレベーター、養生のルール

駐車場がないだけで利用不可とは限りませんが、路上駐車を前提にせず、候補事業所へ最初に伝えてください。

初回前に確認する衣類・タオル・日用品

  • 着替え一式、紙おむつ、尿取りパッド
  • バスタオル、フェイスタオル。必要枚数と貸出の有無
  • 本人用のシャンプー、ボディソープ、洗顔料
  • 保湿剤、外用薬、ガーゼ、被覆材。使用方法と担当者
  • ドライヤー、くし、ひげそりなどの整容用品
  • 連絡帳、医療情報、緊急連絡先

事業所がタオルや石けんを用意する場合でも、レンタル料や材料費がかかることがあります。皮膚トラブルが起きやすい人は、普段の製品と避けたい成分を伝えます。

医療機器・褥瘡・創傷がある場合の確認

人工呼吸器、在宅酸素、吸引、気管切開、胃ろう、カテーテル、ストーマ、褥瘡などがあっても、一律に利用できないとは限りません。一方、すべての事業所が同じ状態へ対応できるわけでもありません。申込み時に情報を省略せず、主治医、訪問看護、事業所で役割分担を決めます。

確認項目事前に決めること
医療機器・チューブ動かせる範囲、濡らせない部位、固定、電源、異常時の手順
褥瘡・創傷洗浄の可否、保護方法、被覆材を外すか、入浴後の処置担当
外用薬・保湿剤使用する物品、指示内容、誰が塗布するか
体調変動観察項目、延期・中止基準、主治医へ連絡する条件
緊急時家族・主治医・訪問看護への連絡順、救急要請の条件

人工呼吸器の設定や回路を、入浴のために家族や介護職員が自己判断で変更してはいけません。必要に応じて訪問看護との同時訪問や時間調整を検討します。

厚生労働省|原則として医行為ではない行為について

入浴を中止する体温・血圧は一律ではない

「体温が何度なら中止」「血圧がいくつなら不可」という基準は、すべての人に共通ではありません。普段の値、病状、薬、主治医の指示、事業所の運用で判断が変わります。

  • 測る項目と本人の通常範囲
  • 全身浴を見合わせる数値・症状
  • 息苦しさ、胸部症状、意識、痛み、嘔吐・下痢など数値以外の目安
  • 部分浴・清拭へ変更できる条件
  • 誰が判断し、誰へ連絡するか
  • 急変時に救急要請する条件

利用開始前に主治医と事業所へ確認し、連絡帳などへ残します。当日の小さな変化も職員へ伝え、家族だけで「いつものこと」と決めつけないでください。

2026年7月時点の料金|基本報酬と自己負担の見方

実施内容要介護1~5要支援1・2
標準体制で全身浴1,266単位856単位
清拭・部分浴基本報酬の90%。参考1,139単位基本報酬の90%。参考770単位
主治医の意見を確認し看護職員なし基本報酬の95%。参考1,203単位基本報酬の95%。参考813単位

1単位の金額は地域区分により10.00~11.40円です。自己負担の概算は、単位数×地域の1単位単価×負担割合で考えます。実際は加算・減算と月単位の端数処理があるため、下表は10円地域で基本報酬だけを使った目安です。

サービス1割負担2割負担3割負担
訪問入浴介護1,266円2,532円3,798円
介護予防訪問入浴介護856円1,712円2,568円

基本料金以外に確認する費用

  • 初回加算、サービス提供体制強化加算などの介護報酬
  • 2026年6月以降の介護職員等処遇改善加算
  • 通常のサービス提供地域外の交通費
  • タオル・衛生材料など保険外費用
  • 有料駐車場代
  • 当日中止やキャンセル時の料金

契約前に、1回分だけでなく、予定回数を入れた月額見込みを1~3割の負担割合に合わせて書面でもらいましょう。

厚生労働省|訪問入浴介護の報酬告示
厚生労働省|介護予防訪問入浴介護の報酬告示

支給限度額を超えた分は全額自己負担

訪問入浴の基本報酬などは、訪問介護、デイサービス、福祉用具貸与など、ほかの在宅サービスと合算して月間の区分支給限度基準額に含まれます。

区分月間の区分支給限度基準額
要支援15,032単位
要支援210,531単位
要介護116,765単位
要介護219,705単位
要介護327,048単位
要介護430,938単位
要介護536,217単位

限度額を超えた部分は1~3割ではなく、原則として全額自己負担です。ただし、加算の一部は限度額管理の対象外です。訪問入浴を週何回入れるかは、ほかのサービスとの組み合わせを見てケアマネジャーと調整します。

限度額の考え方は、介護保険の支給限度額とは?要介護度別の単位数と超過時の自己負担の巻も参照してください。

利用開始までの6ステップ

  1. 市区町村へ要介護・要支援認定を申請する
  2. 認定調査、主治医意見書、審査・認定を受ける
  3. 要介護者はケアマネジャー、要支援者は地域包括支援センター等へ相談する
  4. 訪問入浴をケアプランへ組み込み、候補事業所を比較する
  5. 事業所が本人の状態、住環境、浴槽搬入経路、給排水を確認する
  6. 契約・重要事項説明後、初回利用と振り返りを行う

まだ認定を受けていない場合は、介護保険を使うには?申請から要介護認定までの流れ【前編】の巻で申請の流れを確認できます。

事業所選びの15項目チェックリスト

  1. 希望曜日・時間帯に継続して利用できる
  2. 標準の職員体制と、看護職員が同行しない条件を説明できる
  3. 全身浴、部分浴、清拭への変更方針が明確
  4. 本人の移動方法、拘縮、痛み、体格へ対応できる
  5. 医療機器、チューブ、創傷への対応可否を事前評価する
  6. 主治医・訪問看護との情報共有方法が明確
  7. 本人ごとの中止基準と急変時の連絡順を記録する
  8. 浴槽の設置場所、搬入経路、給排水を事前確認する
  9. 床の養生、水漏れ、室温、プライバシーへ配慮する
  10. 駐車場所と駐車料金の扱いが明確
  11. 家族の立会い・手伝いが必要か説明できる
  12. 家族が用意する物品が一覧になっている
  13. 介護保険、加算、保険外費用、キャンセル料を説明できる
  14. 入浴後の皮膚・体調変化を記録して共有する
  15. 本人の拒否や希望を尊重し、状態変化時に方法を見直す

介護サービス情報公表システムでは、地域の事業所、職員、利用料、運営状況などを比較できます。公表情報だけで分からない医療対応や自宅条件は、直接確認してください。

よくある質問

自宅に浴槽がなくても利用できますか?

事業所が浴槽を持参するため、自宅の浴槽を使えないこと自体は利用不可の理由ではありません。持参浴槽の設置場所、搬入経路、給排水、駐車の確認が必要です。

マンションや狭い部屋でも利用できますか?

利用できる場合があります。エレベーター、廊下、玄関、室内の幅、床の養生、管理規約を事業所が確認して判断します。

家族は毎回立ち会う必要がありますか?

全国一律の必須条件ではありません。本人の状態と事業所の方針によります。初回と2回目以降、家族不在時の鍵、緊急連絡、終了報告の方法を契約前に確認します。

看護師が来るなら医療処置も頼めますか?

必ず頼めるわけではありません。訪問入浴の看護職員が行える範囲と、訪問看護が主治医の指示で行う処置は同じではありません。内容、指示、必要物品、担当者を事前に決めます。

褥瘡や傷があっても入浴できますか?

傷があるだけで一律に可否は決まりません。洗浄、保護、被覆材の交換、入浴後の処置を主治医・訪問看護・事業所へ確認します。

当日体調が悪い場合はどうなりますか?

本人ごとの基準と当日の状態により、全身浴を延期・中止したり、部分浴・清拭へ変更したりします。変更できる内容と費用は契約前に確認してください。

まとめ|本人の希望・安全・家族負担・費用を一緒に比べる

  • 訪問入浴は持参浴槽と複数職員で自宅入浴を支える
  • 要介護と要支援では対象条件、標準体制、基本報酬が異なる
  • 訪問介護、デイサービス、清拭・部分浴も比較する
  • 医療機器や創傷がある人は主治医・訪問看護と役割分担を決める
  • 料金は単位数、地域単価、負担割合、加算、保険外費用で確認する

訪問入浴は「家のお風呂に入れないから仕方なく使うサービス」ではなく、本人の希望を守りながら、家族だけでは難しい入浴介助を専門職へ任せる選択肢です。ケアマネジャーと複数の方法を比べ、初回後の疲れや皮膚状態まで振り返って調整しましょう。

主な公的情報

本記事は一般的な情報提供を目的としています。利用条件、職員体制、料金、医療的対応は、本人の状態、自治体、事業所、介護報酬改定で異なります。契約前にケアマネジャー、主治医、訪問看護、候補事業所へ個別に確認してください。

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