認知症で契約ができない?成年後見制度とは
こんにちは、ロックです!
地域包括支援センターで社会福祉士として働く中で、日々さまざまな介護やお金の相談を受けています。
今回は、認知症になったとき「大切な契約ができなくなる」という問題をどう乗り越えるか?
そしてそれに備える仕組みである**「成年後見制度」**について、できるだけわかりやすく解説します。
介護保険サービスを利用するうえでも関係が深い制度です。
将来の安心のために、ぜひ参考にしてください。
なぜ「契約」が問題になるのか?
年齢を重ねると、体と同じように“判断する力”も少しずつ変わっていきます。
特に認知症になると、「お金の管理」や「契約の内容を理解する」といったことが難しくなるケースがあります。
地域包括支援センターにも、こんなご相談が寄せられます:
「母が認知症で、介護サービスの契約ができず困っている」
「父に代わって施設との契約をしたいが、どうすればいいかわからない」
実は、介護保険を使ってサービスを受けるには、事業者との“契約”が必須です。
ですが、認知症などで契約の内容を正しく理解できないと、契約そのものが無効になることもあります。
現実的には、デイサービスの利用に関する程度であれば、誰も利用に対して「そんなサービスを利用する契約なんて無効だ!」と文句を言う親族などはいないでしょう。
しかし、もしこれが大きな金額を伴う契約などであったら?親族を巻き込む大きな問題になりかねません。
成年後見制度とは?
そうした問題を解決するために用意されているのが、**成年後見制度(せいねんこうけんせいど)**です。
これは、認知症などで判断力が低下した方の代わりに、信頼できる人が「契約」や「財産の管理」を行う制度です。
制度は本人の状態に応じて、3段階に分かれています。
成年後見制度の3つのタイプ
制度の種類 | 対象となる状態 | サポート内容 |
---|---|---|
補助(ほじょ) | 一部だけ判断が難しい | 必要な部分だけ支援 |
保佐(ほさ) | 判断力がやや不十分 | 契約などに同意が必要 |
後見(こうけん) | 判断力がほとんどない | 全面的に代行する |
補助(ほじょ)
- 判断力は基本的にあるが、部分的にサポートが必要な場合に利用
- 例:介護サービスの契約や預金の管理など、一部の手続きだけ支援
🟡 サポートの範囲:軽い支援
保佐(ほさ)
- 日常生活はある程度できるが、重要な契約には不安がある場合
- 保佐人が契約内容を一緒に確認し、同意を与えることで支援
🟠 サポートの範囲:中程度の支援
後見(こうけん)
- 判断力がほとんどなく、日常生活全般で支援が必要な場合
- 後見人が本人に代わって契約や財産管理をすべて行う
🔴 サポートの範囲:全面的な支援
成年後見制度が活用される場面(事例)
地域包括支援センターでは、以下のような場面で制度の利用を提案することがあります。
🏠 例1:認知症のお母さんの代わりに介護施設と契約したい
→ 「後見制度」を使って後見人になった娘さんが、施設との契約やお金の管理を行います。
🛒 例2:高額な買い物に不安がある父にサポートをつけたい
→ 「保佐制度」を利用し、保佐人が契約内容を確認・同意します。
📄 例3:普段の生活は問題ないが、一部の手続きだけ支援がほしい
→ 「補助制度」を使い、必要な手続きだけを補助人が支援します。
成年後見制度を利用するには?
制度を使うには、家庭裁判所に「申立て」を行う必要があります。
🔷 申立てできる人は?
成年後見制度は、次の人が家庭裁判所に申し立てを行えます:
- 本人(支援を受ける人)
- 配偶者
- 4親等以内の親族
- 市区町村長(親族がいない、または申し立てできない場合)
💡【ポイント】
4親等以内の親族には、以下のような人が含まれます:
・子、孫、ひ孫(直系卑属)
・父母、祖父母(直系尊属)
・兄弟姉妹
・おい、めい(兄弟姉妹の子)
・いとこ(親の兄弟姉妹の子)
・甥姪の子なども含まれる場合があります
🔷 手続きの流れ
- 家庭裁判所に申立て
→ 申立書と一緒に、必要書類(戸籍謄本、医師の診断書、財産目録など)を提出します。 - 家庭裁判所の審査・面談
→ 裁判所が医師の診断書や本人・家族の状況をもとに支援の必要性を判断します。 - 後見人・保佐人・補助人の選任
→ 裁判所が適切な支援者を選び、決定を出します。
🧭 制度利用に迷ったら…
申し立ての準備は初めてだと不安も多いものです。
地域包括支援センターでは、成年後見制度に関する相談や、手続きの流れのご説明も行っています。
お一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。
まとめ:成年後見制度は「その人らしさ」を守る制度
成年後見制度は、認知症などで判断が難しくなっても、その人らしい暮らしや権利を守るための制度です。
介護サービスの契約や財産管理など、生活のあらゆる場面で大切な役割を果たします。
最後に:家族と話しておくことが大切です
認知症は誰にでも起こる可能性のある、身近なことです。
だからこそ、「何かあったときにどうするか」を元気なうちに家族で話し合っておくことが、将来の安心につながります。
成年後見制度について気になることがあれば、お近くの地域包括支援センターまで、どうぞお気軽にご相談ください。
コメント