私は地域包括支援センターで10年以上、社会福祉士として高齢者やご家族の相談支援に関わってきました。介護保険は、必要になったときに自動でサービスが始まる制度ではありません。原則として、市区町村へ申請し、要介護・要支援認定を受けてから利用します。
先に結論です。介護保険の利用を考えたら、本人の住民票がある市区町村の介護保険窓口か、担当地区の地域包括支援センターへ相談します。申請後は認定調査と主治医意見書をもとに審査され、結果通知は原則30日以内です。
転倒や急病などで生命・身体に危険があるときは、介護保険の申請を待たず、まず119番や医療機関へ連絡してください。退院が迫っているなど早急に支援が必要な場合は、病院の相談員と市区町村・地域包括支援センターへ早めに相談します。
この記事でわかること
- 介護保険サービスを利用できる人
- 要介護認定を申請する場所と準備するもの
- 認定調査と主治医意見書の仕組み
- 一次判定・二次判定から結果通知までの流れ
- 認定結果を待てない場合や非該当だった場合の相談先
介護保険サービスを利用できる人
介護保険の被保険者は、年齢によって第1号被保険者と第2号被保険者に分かれます。40歳以上なら誰でも同じ条件でサービスを利用できるわけではありません。
| 区分 | 対象者 | サービスを利用できる主な条件 |
|---|---|---|
| 第1号被保険者 | 65歳以上 | 原因を問わず、要介護・要支援認定を受けた場合 |
| 第2号被保険者 | 40〜64歳の医療保険加入者 | 特定疾病が原因で要介護・要支援状態となり、認定を受けた場合 |
第2号被保険者の特定疾病には、初老期における認知症、脳血管疾患、関節リウマチ、末期がんなど16種類があります。病名だけで自動的に利用できるのではなく、その疾病が原因で介護や支援が必要な状態にあることについて認定を受ける必要があります。
相談・申請を考えるタイミング
年齢だけで判断するのではなく、日常生活に支障が出ているかを確認します。次のような変化があれば、認定が必要か分からない段階でも相談して構いません。
- 入院や骨折のあと、移動・入浴・着替えが難しくなった
- 転倒が増え、一人での外出や家事に不安がある
- 薬の管理、支払い、火の始末などで失敗が増えた
- 物忘れや判断力の低下により、一人での生活が心配になった
- 家族の介護負担が増え、今の方法では続けにくくなった
- 退院後の自宅生活に向け、福祉用具や訪問・通所サービスを検討したい
地域包括支援センターは、高齢者本人だけでなく、離れて暮らす家族や近隣の人からも相談を受ける総合相談窓口です。担当センターが分からない場合は、本人が住む市区町村へ問い合わせると案内してもらえます。

申請する場所と、申請を頼める人
申請先は、原則として本人の住民票がある市区町村の介護保険担当窓口です。課の名称は「介護保険課」「高齢福祉課」など自治体によって異なります。
本人や家族が申請できるほか、要件を満たす指定居宅介護支援事業者、介護保険施設、地域包括支援センターなどに手続きの代行を依頼できます。対応方法は地域や機関によって異なるため、訪問前に電話で確認すると確実です。
申請前に確認しておくもの
必要書類は自治体によって異なります。一般的には次の情報を確認します。
- 介護保険被保険者証(65歳以上)
- 医療保険の加入状況を確認できるもの(40〜64歳は提出を求められる場合がある)
- 本人確認書類、マイナンバーを確認できる書類
- 主治医の氏名、医療機関名、所在地、連絡先
- 最近困っている生活動作と、その頻度
- 家族など日中に連絡できる人の連絡先
被保険者証を紛失した場合や、主治医がいない場合も、申請をあきらめず市区町村へ相談してください。主治医がいない場合は、市区町村が指定する医師の診察が必要になることがあります。
申請から要介護認定までの6つの流れ
1.市区町村へ要介護・要支援認定を申請する
申請書に本人の基本情報、主治医、申請理由などを記入して提出します。申請日以後に利用したサービスが介護保険給付の対象となる場合があるため、支援が必要と分かった時点で早めに相談することが大切です。
2.認定調査を受ける
市区町村の職員や委託を受けた認定調査員が、本人の自宅・病院・施設などを訪問します。心身の状態、生活動作、認知機能、行動、医療の必要性などについて、本人や家族へ聞き取ります。
調査では、できた日の様子だけでなく、普段困っていることや介助が必要になる頻度を具体的に伝えます。本人が遠慮して「何でもできる」と答えやすい場合は、本人の了解を得たうえで家族が同席したり、事前にメモを用意したりすると状況を伝えやすくなります。
3.市区町村が主治医意見書を依頼する
主治医意見書は、市区町村が申請書に記載された主治医へ作成を依頼します。本人が医師へ直接作成を依頼して費用を支払う書類ではなく、意見書作成料の自己負担はありません。
主治医には、日常生活で困っていることや最近の変化を受診時に伝えておくと、状態を把握してもらいやすくなります。長期間受診していない場合は診察が必要になることがあるため、申請時に市区町村へ確認します。
4.コンピューターによる一次判定
認定調査の結果と主治医意見書の一部をもとに、全国共通の方法でコンピューター判定が行われます。判定は病名の重さだけではなく、どの程度の介護が必要かを基準にします。
5.介護認定審査会による二次判定
保健・医療・福祉の専門職で構成される介護認定審査会が、一次判定、認定調査の特記事項、主治医意見書などを総合して審査します。その判定をもとに市区町村が認定します。
6.認定結果が通知される
結果は「非該当」「要支援1・2」「要介護1〜5」のいずれかです。申請から認定通知までは原則30日以内ですが、調査や主治医意見書の状況などにより遅れる場合があります。遅れる場合は、市区町村から延期の理由と見込み時期が通知されます。
認定結果を待てないほど支援を急ぐ場合
退院直後などでサービスを急ぐ場合、認定結果を待つ間に暫定的なケアプランを作り、サービスを利用できることがあります。ただし、非該当になった場合や、認定された区分の支給限度額を超えた場合は、費用の全部または一部が自己負担になる可能性があります。
自己判断で契約を進めず、市区町村、地域包括支援センター、病院の相談員、居宅介護支援事業所などへ、費用の扱いを含めて事前に確認してください。
「非該当」でも相談を終わらせない
非該当は、「困りごとがない」という意味ではありません。自治体によっては、基本チェックリストなどを通じて介護予防・日常生活支援総合事業、配食、見守り、通いの場などを利用できる場合があります。
状態が変化した場合は、あらためて申請できます。認定結果と実際の状態が大きく異なると感じる場合も、まず市区町村や地域包括支援センターへ相談しましょう。
申請前の確認リスト
- 本人の住民票がある市区町村を確認した
- 主治医と医療機関の情報を確認した
- 困っている生活場面と頻度をメモした
- 認定調査に同席する人を相談した
- 退院予定など、サービスを急ぐ事情を伝えた
- 必要書類を市区町村へ確認した
認定後はケアプランを作ってサービス利用へ進む
認定を受けただけでは、サービスは自動で始まりません。要支援1・2の場合は地域包括支援センターなどへ、要介護1〜5の場合は居宅介護支援事業所などへ相談し、本人の希望と生活状況に合わせたケアプランを作成します。
次の記事では、認定結果が届いてから相談先を決め、ケアプランを作成するまでの流れを解説します。

参考にした公的情報
まとめ
介護保険サービスの利用は、市区町村への要介護・要支援認定の申請から始まります。申請後は認定調査、主治医意見書、一次判定、二次判定を経て、原則30日以内に結果が通知されます。手続きが難しいときや支援を急ぐときは、担当地区の地域包括支援センターへ早めに相談してください。
本記事は2026年7月18日時点の公表情報に基づく一般的な解説です。必要書類、申請方法、利用できる地域支援は自治体によって異なります。個別の医療・介護判断については、市区町村、地域包括支援センター、医療機関などへ確認してください。

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