親の様子が「最近おかしい」と感じたら|今日やること・相談先・介護の始め方の巻

介護に関する知識や考え方

「同じ話を何度もする」「薬が余っている」「支払いを忘れる」「以前より怒りっぽい」。親の小さな変化に気づいても、認知症なのか、介護を始める段階なのか、家族だけでは判断しにくいものです。

私は地域包括支援センターで10年以上、高齢者と家族の相談支援に携わる社会福祉士です。この記事では、親の様子が「最近おかしい」と感じた家族が、緊急性を確かめ、事実を記録し、適切な相談先へつながるまでを、2026年7月18日時点の公的情報に基づいて順番に解説します。

最初に大切なのは、すべてを認知症や年齢のせいにしないことです。急な変化には、脳卒中や感染症、脱水、薬の影響など、早い受診が必要な原因もあります。

最初に確認|突然の変化は119番を考える

次の症状が突然現れたときは、介護の相談より先に119番へ連絡してください。

  • 顔の片側がゆがむ、片側の手足に力が入らない
  • ろれつが回らない、言葉が出ない、話を理解できない
  • 意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応が悪い
  • 突然の激しい頭痛、けいれん、急な呼吸困難がある
  • 転倒や頭部打撲の後に、強い眠気、嘔吐、混乱がある

これらの症状が短時間で消えても、一過性脳虚血発作など脳卒中の前触れの可能性があります。「治ったから大丈夫」と様子を見ず、119番で状況を伝えてください。

判断に迷うときは、実施地域であれば救急安心センター事業「#7119」へ相談するか、総務省消防庁の全国版救急受診アプリ「Q助」も参考にできます。ただし、明らかに緊急性が高い場合はアプリで様子を見ず119番です。

総務省消防庁|高齢者のための救急車利用ガイド

親の様子が気になった日にやることは3つ

  1. 急な変化か、徐々に続く変化かを確認する
    突然の症状や意識の異常があれば、受診・救急を優先します。
  2. 評価ではなく、起きた事実を1件メモする
    「ぼけた」ではなく、「7月18日、朝の薬が3日分残っていた」のように記録します。
  3. かかりつけ医か、親の住所地の地域包括支援センターへ連絡する
    診断や要介護認定がなくても相談できます。家族だけで先に相談しても構いません。
変化の状況優先する行動
突然の麻痺、ろれつ困難、意識異常、激しい頭痛など119番
数時間から数日で急に混乱した、発熱、脱水、転倒、薬の変更がある当日中を目安に医療機関へ相談。夜間・休日は地域の救急相談も確認
数週間から数か月かけて物忘れや生活上の失敗が増えているかかりつけ医または地域包括支援センターへ早めに相談
本人は生活できているが、家族の心配が続く事実を記録し、地域包括支援センターへ家族だけでも相談

「急におかしい」は認知症と決めつけない

認知症による変化は徐々に目立つことが多い一方、数時間から数日で急に混乱する、昼夜が逆転する、幻覚が見える、落ち着かなくなるといった状態は、せん妄など別の原因も考えます。

せん妄は、感染症、脱水、便秘、痛み、睡眠不足、薬の追加・変更などをきっかけに起こることがあります。家庭で原因を決めつけず、発熱、食事・水分、排泄、転倒、最近変わった薬を確認して医療機関へ伝えてください。

また、物忘れがあっても、加齢による変化、うつ状態、睡眠障害、聴力低下、薬の影響などが関係する場合があります。この記事のチェック項目だけで認知症の有無や重症度は判定できません。診断は医師が行います。

国立長寿医療研究センター|もの忘れセンター

観察したい12項目|数ではなく生活への影響を見る

「何個当てはまれば認知症」という使い方はしません。以前との違い、頻度、本人が困っていること、安全への影響を見ます。

確認する場面記録する具体例
物忘れ・会話同じ質問を何分後に繰り返したか、約束を忘れた回数
服薬飲み忘れ、重ねて飲んだ疑い、薬の残数
お金支払い忘れ、同じ商品の購入、高額契約、不審な送金
料理・火の管理鍋の焦がし、ガスの消し忘れ、調理手順の変化
買い物同じ物が増えた、必要品を選べない、会計で困った
移動・運転慣れた道で迷った、傷が増えた、信号や操作の間違い
食事・水分食事量の低下、冷蔵庫の傷んだ食品、体重変化
排泄・清潔失敗の増加、入浴・着替えの頻度、季節に合わない服装
転倒・歩行転倒日時、ふらつき、痛み、頭を打ったか
睡眠昼夜逆転、夜間の外出、眠れていない日数
気分・性格急な怒り、不安、意欲低下、閉じこもりが始まった時期
電話・訪問者不審な勧誘、知らない契約書、同じ人からの連絡

そのまま使える観察メモ

最初に気づいた日年月日。急に/徐々に/不明
日時・場所いつ、どこで起きたか
実際に起きたこと本人の言葉や行動を評価せずに記録
以前との違い以前はできていたか、今回までの回数
生活・安全への影響服薬、金銭、火、運転、食事など
前後の状態発熱、痛み、睡眠、食事、水分、排泄、転倒、薬の変更
家族の対応声かけや受診、その後どうなったか
本人の希望困っていること、続けたい生活、相談への意向

スマートフォンのメモでも十分です。家族で共有するときも、暗証番号、パスワード、不要な個人情報は書かないでください。受診時は、お薬手帳と一緒に見せると経過を伝えやすくなります。

本人を責めずに相談や受診を提案する

本人も失敗や変化に気づき、不安を抱えていることがあります。「認知症だ」「また忘れた」と責めたり、記憶を試したり、大勢で囲んで結論を迫ったりすると、相談を拒みやすくなります。

避けたい言い方

「最近ボケているよ。認知症の検査に行こう」

事実と心配を伝える言い方

「先週、朝の薬が2日分残っていて心配になったんだ。病名を決めるためではなく、体調や薬の影響も含めて、いつもの先生に一緒に相談しない?」

拒否されたときの言い方

「今すぐ決めなくて大丈夫。最近、自分で困っていることはある?相談するなら、いつもの先生と地域の相談員のどちらが話しやすい?」

一度で同意を得ようとせず、本人が気にしている症状や生活上の困りごとから提案します。安全上の切迫した問題がなければ、本人の意思とペースを尊重します。

厚生労働省|認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン

相談先の使い分け|迷ったら地域包括支援センター

相談先向いている相談
かかりつけ医急ではない体調変化、持病・薬の影響、専門医への紹介
地域包括支援センター介護の入口、見守り、家族関係、金銭・権利擁護、受診や申請先が分からないとき
もの忘れ外来・認知症疾患医療センター認知機能について専門的な診察が必要なとき。受診方法は施設ごとに確認
市区町村の介護保険窓口要介護認定の申請、介護保険制度の手続
認知症初期集中支援チーム受診や介護サービスにつながりにくい本人・家族への訪問を含む初期支援。利用方法は自治体に確認

地域包括支援センターは診断前でも相談できる

地域包括支援センターは、市区町村が設置する高齢者の総合相談窓口です。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどが、医療、介護、福祉、権利擁護を一緒に整理します。要介護認定や認知症の診断がなくても、本人の住所地を担当するセンターへ相談できます。

家族だけで先に相談することもできます。「まだ介護ではない」「本人が相談を嫌がる」という段階でも、観察した事実と家族の困りごとを伝えてください。必要に応じて、受診、訪問、介護予防、見守り、要介護認定など次の手段を一緒に考えます。

担当センターは、市区町村のウェブサイトや厚生労働省「介護サービス情報公表システム」で探せます。自治体によって名称が異なることがあります。

厚生労働省|認知症に関する相談先

相談前に準備する7項目

  1. 変化に気づいた時期、急か徐々か、具体例と頻度
  2. 発熱、痛み、転倒、食欲、水分、排泄、睡眠の変化
  3. 持病、受診歴、お薬手帳、最近追加・変更された薬
  4. 服薬、金銭、料理、買い物、運転、火の管理への影響
  5. 本人が困っていること、希望する暮らし、嫌がっていること
  6. 同居・別居、家族の仕事、訪問できる頻度、近隣の協力者
  7. 今回聞きたいことを3つ以内に整理

すべてそろわなくても相談できます。空欄があることを理由に先延ばしにせず、分かる範囲で伝えてください。

要介護認定はいつ申請する?

地域包括支援センターへ相談するだけなら、要介護認定は不要です。訪問介護、デイサービス、福祉用具など、介護保険サービスの利用が必要と見込まれる場合に、市区町村へ要介護・要支援認定を申請します。

申請後は、認定調査、主治医意見書、介護認定審査会を経て結果が決まります。認定は病名だけで決まるものではなく、心身の状態や介助の必要性などを基に判定されます。申請を急ぐべきか迷う場合は、地域包括支援センターや市区町村窓口へ相談しましょう。

詳しい手続は、介護保険を使うには?申請から要介護認定までの流れ【前編】の巻で順番に解説しています。

離れて暮らす家族が最初にできること

  • 親の住所地の地域包括支援センターを確認する
    子どもの住所地ではなく、親の生活地域を担当するセンターへ相談します。
  • 連絡担当を一人に決める
    複数の家族が別々に連絡して情報が混乱しないよう、窓口役と共有方法を決めます。
  • 本人の同意を得て連絡網を作る
    近隣親族、かかりつけ医、薬局、地域包括支援センターなどを整理します。
  • 定時連絡で確認する項目を固定する
    食事、薬、体調、郵便物、次の受診予定などを短く確認します。
  • 退職や転居を先に決めない
    介護サービスと勤務先の介護休業・両立支援制度を確認してから考えます。

見守りカメラや位置情報機器は、便利さだけでなく本人のプライバシーにも関わります。緊急性がある場合を除き、目的と共有範囲を本人に説明し、同意を得て使うことが基本です。

厚生労働省|仕事と介護の両立支援

安全に関わる4つの問題は早めに共有する

運転

車の傷、道迷い、信号の見落とし、操作ミスが増えたときは、事故が起きてからではなく、かかりつけ医や警察の安全運転相談窓口へ相談します。鍵を一方的に隠すだけでは対立が深まりやすいため、代わりの移動手段も同時に考えます。

火の管理

鍋の焦がしや消し忘れがあれば、原因の確認とともに、自動消火機能、電磁調理器、配食、見守りなど複数の方法を検討します。機器の変更だけで十分か、生活全体の支援が必要かを地域包括支援センターと整理します。

行方不明

帰宅できず所在が分からない場合は、家族だけで長時間探さず、早い段階で110番へ連絡します。日頃から自治体の見守り・行方不明高齢者支援制度の有無も確認しておきます。

金銭被害・不審な契約

知らない請求、同じ商品、大量の健康食品、不審な振込、訪問販売の契約書を見つけたら、本人を責めず、書類や経緯を保管します。消費者トラブルは消費者ホットライン188、権利擁護や継続的な財産管理は地域包括支援センターへ相談します。

虐待・介護放棄・家族の限界

不自然な傷、食事や清潔の不足、放置、暴言、本人のお金の不当な使用などが疑われる場合は、虐待と確定していなくても市区町村または地域包括支援センターへ相談します。差し迫った暴力や犯罪は110番、負傷や生命の危険は119番です。介護者が限界を感じている段階で相談することも、本人と家族を守る対応です。

判断能力が低下した後の契約や財産管理には、必要な権限と本人の意思を個別に考える必要があります。制度の違いは、成年後見制度とは?法定後見・任意後見の違い、費用、申立てを社会福祉士が解説の巻を参照してください。

家族で役割分担するときの決め方

「近くに住む人が全部する」では長続きしません。家族会議では、感想ではなく事実を共有し、役割を小さく分けます。

「『おかしい』だけでは意見が分かれるから、見た事実を同じメモに残そう。今週は私が地域包括へ相談し、あなたは電話で食事と薬を確認して。費用と今後の予定は週末に共有しよう」

役割担当例
相談窓口地域包括、医療機関、ケアマネジャーとの連絡
生活確認訪問、定時電話、冷蔵庫・薬・郵便物の確認
記録共有受診結果、サービス、家族の予定を一覧化
費用管理本人の同意と権限を確認し、支出と立替を記録
緊急時誰が現地へ行くか、連絡順、鍵の扱いを決める

介護者の負担や心の不調を後回しにしないことも支援の一部です。疲れや不眠が続く場合は、介護で心が疲れたときに|支える人のためのメンタルケア入門の巻も確認してください。

相談する前の10項目チェックリスト

  1. 突然の麻痺、ろれつ困難、意識異常など緊急症状がない
  2. 変化に気づいた時期と、急か徐々かを確認した
  3. 具体的な出来事を少なくとも1件記録した
  4. 食事、水分、排泄、睡眠、発熱、痛みを確認した
  5. お薬手帳と最近の薬の変更を確認した
  6. 服薬、金銭、火、運転など安全への影響を確認した
  7. 本人が困っていることと希望を聞いた
  8. 親の住所地の地域包括支援センターを調べた
  9. 家族の連絡窓口と緊急時の担当を決めた
  10. 相談先へ聞きたいことを3つ以内にまとめた

よくある質問

本人が相談を拒んでいても、家族だけで地域包括へ相談できますか?

相談できます。まず家族が状況を伝え、本人への関わり方や訪問の可否を一緒に考えます。ただし、本人への支援や情報共有では、本人の意思と個人情報への配慮が必要です。

物忘れがあれば、すぐ要介護認定を申請しますか?

物忘れだけで直ちに申請が必要とは限りません。医療的な評価と生活上の困りごとを整理し、介護保険サービスが必要と見込まれる場合に申請を検討します。迷う段階から地域包括支援センターへ相談できます。

地域包括支援センターへの相談は有料ですか?

相談は無料です。紹介されたサービスや医療、申請書類の取得などには費用がかかる場合があるため、利用前に確認してください。

認知症初期集中支援チームとは何ですか?

医療・介護の専門職が、認知症が疑われる人や家族を訪問し、受診や介護サービスにつながるための初期支援を集中的に行う仕組みです。対象者や相談経路は自治体によって異なるため、地域包括支援センターまたは市区町村へ確認します。救急対応の代わりではありません。

まとめ|診断を急ぐ前に、緊急性・事実・相談先を整理する

  • 突然の麻痺、ろれつ困難、意識異常などは119番
  • 急な混乱は認知症と決めつけず、身体状態や薬も含めて受診する
  • 「おかしい」ではなく、日時と具体的な事実を記録する
  • 本人を責めず、困りごとや体調確認から相談を提案する
  • 迷ったら、親の住所地の地域包括支援センターへ家族だけでも相談する

家族が異変に気づいた時点で、すべてを一人で解決する必要はありません。緊急性を確かめ、起きた事実を一つ記録し、相談先へ伝える。その3つが、本人の暮らしと家族の生活を守る最初の一歩です。

主な公的情報

本記事は一般的な情報提供を目的としています。症状や緊急性は個別に異なります。急な症状や生命の危険が疑われる場合は119番へ連絡し、診断・治療は医療機関へ、介護や生活上の相談は市区町村・地域包括支援センターへ確認してください。

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