こんにちは、社会福祉士のロックです。
自分や親の介護費用を考えたとき、「預金だけでは足りないかもしれないから、投資で増やしたい」と考える方もいるでしょう。しかし、介護は始まる時期を正確に決められず、必要になったときに相場が下落している可能性もあります。
この記事では、地域包括支援センターで相談支援に携わった経験をもとに、介護費用の見積もり方、本人の年金・預貯金と公的制度の確認方法、使う時期に応じた預貯金と投資の分け方を整理します。
近い将来に必要となる可能性がある介護費用は、安全性と換金しやすさを優先します。投資は、当面使う予定がなく、値下がりを受け入れられる範囲の資金で検討します。
この記事でわかること
- 介護費用をすべて投資へ回さない方がよい理由
- 親や自分の介護費用を見積もる6つの手順
- 生活防衛資金・近く使う資金・長期資金の分け方
- 投資前に確認する目的・時期・必要額・許容損失
- NISAで元本保証されない点
- 介護開始や相場下落時の見直し方法
結論:介護費用は使う時期で3つに分ける
介護費用を含む将来資金は、すべてを預金または投資のどちらか一方へ置くのではなく、使う時期と損失への耐性で分けます。
| 資金区分 | 内容の例 | 基本的な置き場所の考え方 |
|---|---|---|
| 日常・緊急資金 | 生活費、収入減、急病、急な介護開始への備え | すぐ使える預貯金などで確保 |
| 近い将来使う資金 | 数年以内に見込む介護費、住宅修繕、教育費 | 安全性と換金しやすさを優先 |
| 当面使わない資金 | 時期が遠く、支出時期を調整できる老後資金等 | 許容できる損失の範囲で投資を検討 |
株式や投資信託は、必要な時期に値下がりしている可能性があります。介護サービスの支払いを待ってもらえない場合、回復を待たずに売却しなければならないこともあります。
J-FLECも、お金を「日常生活に必要なお金」「近い将来使う予定のお金」「当面使う予定のないお金」に分け、目的に応じて振り分ける考え方を示しています。
まず介護費用を投資額ではなく支出額から考える
「介護のために1,000万円投資する」と先に金額を決めても、実際の不足額とは一致しない可能性があります。介護費用は、要介護度、在宅か施設か、地域、利用するサービス、負担割合、本人の年金・預貯金などで変わります。
全国平均をそのまま自分の目標額にするより、本人の条件と利用予定サービスを仮置きし、複数のケースで見積もる方が実用的です。
親や自分の介護費用を見積もる6つの手順
1.介護の条件を仮置きする
- 要支援・要介護度
- 在宅介護か施設入所か
- 利用するサービスと回数
- 施設の種類と部屋タイプ
- 本人が暮らす地域
現在の状態だけでなく、在宅を続ける場合、施設へ移る場合、要介護度が上がった場合など、2〜3通りを作ります。
2.本人が利用できる収入・資産を確認する
年金は通知書の額だけでなく、税・社会保険料等を差し引いた実際の振込額を確認します。将来の自分の年金は、ねんきんネットで条件を変えて試算できます。
預貯金を全額介護費へ充てる前提にはしません。本人や配偶者の生活費、医療費、住居費、葬送費、緊急予備費など、介護以外に必要な資金も残します。
3.介護保険サービス費を見積もる
介護保険負担割合証に記載された1割・2割・3割の負担割合を確認します。在宅サービスは要介護度別の支給限度額があり、上限を超えたサービス部分は原則として全額自己負担です。
在宅介護では、担当ケアマネジャーへ、サービス内容、回数、限度額内の自己負担、超過分を分けた月額見積もりを依頼します。支給限度額と単位の見方は、次の記事で解説しています。

4.保険外費用を加える
- 食費、居住費・滞在費
- 日用品費、理美容費
- 通院・面会等の交通費
- 医療費、薬代
- 選択した部屋やサービスの追加費用
- 施設の入居一時金、退去時の精算
施設を検討する場合は、料金表と重要事項説明書を取り寄せ、初期費用と月額費用を分けて書面で確認します。
5.負担軽減制度を反映する
高額介護サービス費は、対象となる1〜3割の自己負担が所得区分ごとの月額上限を超えた場合に、超過分が支給される制度です。食費・居住費、福祉用具購入費、支給限度額を超えた10割負担などは原則として対象外です。
介護保険施設やショートステイの食費・居住費は、所得・資産等の要件を満たし、負担限度額認定を受けると軽減される場合があります。すべての有料老人ホーム等へ適用される制度ではありません。申請時点の基準を市区町村で確認してください。
6.本人資金で不足する額を出す
月の介護関連支出
= 限度額内のサービス費の自己負担
+ 限度額超過分
+ 食費・居住費等の保険外費用
- 高額介護サービス費等の軽減見込額
家計から準備する不足額
= 月の介護関連支出
- 本人の年金等から無理なく充てられる額
1年、3年、5年など複数の期間で確認し、要介護度、利用サービス、料金、年金額が変わるたびに見直します。全国平均の介護期間を一つだけ当てはめないことが大切です。
親の介護費は誰が負担する?
親子には法律上、互いに扶養義務があります。ただし、親の介護費を子が当然に全額負担すると一律に決まっているわけではありません。
本人の年金・預貯金、公的な負担軽減制度、必要な介護内容に加え、配偶者や他の扶養義務者の有無、それぞれの収入・資産・生活状況などを踏まえて、負担方法を個別に検討します。
- 本人の収入・資産と生活費を確認する
- 公的な負担軽減制度を確認する
- それでも不足する可能性がある額を出す
- 家族が補う場合は、誰がいくら負担できるか相談する
親の預貯金を子が無断で使える前提にもできません。本人の判断能力、意思、財産管理の状況を確認し、必要に応じて地域包括支援センター、法律専門家、家庭裁判所等へ相談してください。
投資できるお金を4項目で判断する
| 確認項目 | 自分への質問 |
|---|---|
| 目的 | 親の介護、自分の介護、老後、医療、住宅など何に使うか |
| 時期 | いつ必要か。支出時期を延期できるか |
| 必要額 | 公的給付や本人資金を差し引いた不足額はいくらか |
| 許容損失 | 何円減っても目的を実行できるか |
許容損失は「30%下がっても平気」と割合だけで考えず、「300万円が210万円になっても必要な介護費を払えるか」のように金額へ置き換えます。必要時期が近く、減ると困る資金は投資対象から外します。
生活防衛資金と介護準備金を分ける
生活防衛資金は、収入減や急病など予期しない出来事から日常生活を守るお金です。生活費の3か月〜1年分は一つの参考ですが、全員共通の正解ではありません。
- 雇用と収入の安定性
- 共働きか、収入源が一つか
- 扶養する家族の人数
- 健康状態と医療費
- 住宅や車の臨時支出
- 親族の介護を担う可能性
すでに具体化している介護費は、生活防衛資金へまとめず、別の目的別資金として管理すると不足を把握しやすくなります。
NISAは介護費の値下がりを防ぐ制度ではない
NISAは、対象となる投資から得た利益や配当等を非課税にする制度です。元本保証や損失補償の制度ではありません。
NISA口座の投資商品も値下がりします。また、NISA口座内の売却損は、特定口座・一般口座の利益との損益通算や繰越控除ができません。「NISA枠が余っているから」という理由だけで、近く使う介護費を投資へ回さないようにします。
新NISAの非課税枠、対象商品、利用前の注意点は、次の記事で整理しています。

相場が下落したときは目的から見直す
相場の下落時に「絶対に売ってはいけない」「持ち続ければ必ず戻る」とは言えません。まず次の条件を確認します。
- 当初の投資目的は変わっていないか
- 資金を使う時期が近づいていないか
- 生活防衛資金は足りているか
- 介護開始や収入減など家計の前提が変わっていないか
- 許容できる損失額を超えていないか
近い将来必要な資金が不足する場合や、家計の前提が変わった場合は、一部売却やリスクの縮小も選択肢になります。保有継続と売却のどちらかを一律の正解にせず、目的と家計条件から判断します。
私自身の投資方針と判断ルールは、次の記事で紹介しています。

資金計画を見直すタイミング
少なくとも年1回を点検の目安にし、次の出来事があったときは臨時に見直します。年1回は管理しやすくするための目安であり、制度上の決まりではありません。
- 親や自分の介護が始まった
- 要支援・要介護認定を受けた、区分が変わった
- 退職、転職、休職、収入減があった
- 病気、死亡、相続など家族状況が変わった
- 住宅購入・修繕など大きな支出が決まった
- 使う時期が近づいた、必要額が変わった
| 見直す項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 介護の見込み | 在宅・施設、要介護度、サービス、月額不足 |
| 本人資金 | 年金振込額、預貯金、配偶者の生活費 |
| 生活防衛資金 | 必要な月数分を預貯金等で確保できているか |
| 投資資産 | 近く使う資金が混ざっていないか |
| 許容損失 | 割合ではなく金額で超えていないか |
| 取り崩し | いつ、何から、いくら取り崩すか |
社会福祉士として勧めたい家族での確認
社会福祉士としてのポイント
介護が始まってから初めて通帳や年金を確認すると、本人の意思が分からず、家族間で負担の話がまとまらないことがあります。元気なうちに、財産額を無理に聞き出すのではなく、介護を受ける場所、利用したい制度、相談先、重要書類の保管場所から話し合ってください。
- 介護を受けたい場所と暮らし方
- 年金・預貯金から負担できる範囲
- 介護保険証・負担割合証・通帳等の保管場所
- 家族ができる支援と難しい支援
- 判断能力が低下した場合の相談先
介護保険の申請からサービス利用までの流れは、次の記事で解説しています。


相談先
| 相談先 | 相談できること |
|---|---|
| 地域包括支援センター | 介護全般、申請、地域のサービス、家族相談 |
| 市区町村の介護保険担当課 | 負担割合、高額介護サービス費、負担限度額認定 |
| ケアマネジャー | サービスの組み合わせ、支給限度額、月額見積もり |
| 施設・事業者 | 初期費用、月額費用、保険外費用、退去時の精算 |
| 年金事務所・ねんきんネット | 年金額・将来の見込額 |
| 法律専門家・家庭裁判所 | 扶養負担、財産管理、家族間の合意が難しい場合 |
よくある質問
親の介護費用を子が全額準備するべきですか?
一律には決まりません。まず本人の年金・預貯金、公的制度、必要な介護費用を確認します。不足が見込まれる場合は、家族それぞれの収入・資産・生活状況を踏まえて分担を相談します。
介護費用の全国平均を目標額にしてよいですか?
参考にはなりますが、そのまま必要額にはできません。在宅・施設、要介護度、地域、本人の年金、負担軽減制度などを使って個別に見積もります。
NISAなら介護費用を安全に増やせますか?
NISAは投資利益等を非課税にする制度で、元本保証ではありません。近く使う資金は預貯金等で確保し、投資は当面使わない資金で検討します。
介護が急に始まり、見積もりがありません
本人の住所を担当する地域包括支援センターへ相談してください。入院中なら病院の医療ソーシャルワーカー等へ、退院後の介護と費用を相談できます。
まとめ
- 介護費用は全国平均ではなく、本人の条件とサービス見積もりで計算する
- 本人の年金・預貯金と公的な負担軽減制度を先に確認する
- 日常・緊急資金、近く使う資金、当面使わない資金に分ける
- 投資は目的・時期・必要額・許容損失を確認して行う
- NISAは非課税制度であり、元本保証ではない
- 介護開始や家計変化があれば資金計画を見直す
投資の目的は、お金を増やすこと自体ではありません。必要なときに必要なお金を使い、本人と家族が暮らしを続けられるようにすることです。介護費用を具体的に見積もり、守るお金と育てるお金を分けて準備しましょう。
参考にした公的情報
- 介護サービスの利用料・負担軽減制度(厚生労働省)
- 介護サービス費用の概算料金試算(厚生労働省)
- ねんきんネットによる年金見込額試算(日本年金機構)
- 地域包括支援センター(厚生労働省)
- 扶養請求調停(裁判所)
- NISAを知る(金融庁)
- NISA制度(国税庁)
本記事は2026年7月18日時点の公的情報をもとにした一般的な解説です。介護費用、負担軽減制度、扶養負担、投資の適否は、本人・家族の収入、資産、生活状況、自治体、制度改正、利用サービス等により異なります。個別の介護費用は市区町村・地域包括支援センター・ケアマネジャー等へ、法律・税務・金融判断は各分野の専門家へご確認ください。


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