親のお金について最初から預金残高や暗証番号まで聞く必要はありません。介護や入院に備えて先に共有したいのは、収入と支払いの流れ、財産・負債の有無、重要書類の保管場所、医療・介護にお金をどう使いたいかという最低限の情報です。
大切なのは、家族が安心するために親のお金を管理することではなく、本人が望む暮らしを守るために、本人の同意を得て必要な範囲を少しずつ共有することです。
最初に確認したいこと
- 年金などの収入と、生活費を支払う金融機関
- 家賃・公共料金・保険料など、止まると困る支払い
- 預貯金・証券・保険・不動産・借入れなどの有無
- 通帳・保険証券・契約書などの保管場所
- 医療・介護費をどこから支払いたいか
- 困ったときに相談してほしい人
医療・介護・終活をまとめて話す方法は、親の終活は何から話す?介護・医療・お金を30分で確認する対話ガイドの巻でも整理しています。
親のお金を聞く目的を先にそろえる
親子であっても、親のお金は親本人の財産です。「将来介護するのは自分だから」「詐欺が心配だから」という理由だけで、通帳やカードを取り上げたり、本人に説明せず預金を移したりすることは避けなければなりません。
話し合いの目的は、財産を把握して家族が自由に動かせるようにすることではありません。急な入院や介護が始まったときに、生活上の支払いを止めず、本人の希望に沿って相談できる状態をつくることです。
地域包括支援センターで相談を受けていると、急な入院後に困りやすいのは、資産総額が分からないことよりも、「何がどこにあり、毎月の支払いがどうなっているか分からない」場合です。正確な残高を聞く前に、生活を続けるための情報から確認します。
介護前に確認したい7項目
1.収入が入る場所
年金や給与、家賃収入などがあるか、どの金融機関へ入るかを確認します。最初は残高まで聞かず、「生活費に使っている口座はどこか」だけでも構いません。
2.毎月の支払い
家賃、住宅ローン、公共料金、税金、保険料、通信費、定期購入などを確認します。入院によって郵便物を見られなくなっても、支払いが滞らないようにするためです。
3.財産の種類と問い合わせ先
預貯金、証券口座、生命保険、個人年金、不動産、車などの有無を確認します。正確な金額よりも先に、「何があるか」「どこへ問い合わせればよいか」を一覧にします。
4.借入れや保証の有無
住宅ローン、カードローン、分割払い、連帯保証などがあるかを確認します。財産だけを聞いて負債を確認しないと、介護費に使える金額を見誤る可能性があります。
5.重要書類の保管場所
通帳、保険証券、不動産関係書類、年金や税金の通知、契約書などの保管場所を確認します。書類を家族が持ち出すのではなく、まず本人と一緒に置き場所を決め、誰へ伝えるかを確認します。
6.医療・介護にお金をどう使いたいか
自宅で暮らし続けたいか、必要なら有料サービスや施設を利用したいか、医療・介護費をどの口座から支払いたいかを聞きます。親の介護費を誰が負担するかは、親の介護費用は誰が払う?本人のお金・家族負担・介護離職を防ぐ家計整理の巻でも解説しています。
7.誰にどこまで共有するか
きょうだい、親族、ケアマネジャーなど、誰へ何を伝えてよいか本人に決めてもらいます。「長男だから全部知る」「近くに住む家族だけで決める」とせず、本人の意向と家族間の記録を残します。
自然に切り出す5つの言い方
突然「いくら持っているの」と聞くと、財産を狙われているように感じさせることがあります。自分を主語にし、目的と時間を限定すると話しやすくなります。
- 「自分も緊急連絡先を整理しているから、一緒に確認したい」
- 「入院したときに支払いが止まらないよう、使っている金融機関だけ教えて」
- 「残高はいらないから、保険証券や契約書の場所だけ知っておきたい」
- 「今日は10分だけ、公共料金の支払い方法を確認してもいい?」
- 「困ったとき、誰に相談してほしい?」
一度にすべて聞かず、最初は一つのテーマだけにします。親が話したくないと言った日はそこで終え、後日あらためて話します。差し迫った被害がなければ、話さないという選択も本人の意思として尊重します。
暗証番号やパスワードは共有しない
家族の共有メモに、キャッシュカードの暗証番号、インターネットバンキングや証券口座のパスワード、ワンタイムパスワード、クレジットカードのセキュリティコードなどを残すのは避けます。
家族による手続きが必要な場合は、ログイン情報を教え合うのではなく、金融機関の正式な代理手続きや支援制度を確認します。家族が医療費や介護費を立て替えた場合は、日付・金額・目的を記録し、領収書を保管して、親のお金と家族のお金を混ぜないようにします。
認知機能が低下しても本人の意思を尊重する
元気なうちに話す目的は、家族が管理権を得ることではありません。誰に相談してほしいか、どのような暮らしを望むか、何にお金を使いたいかを、本人の言葉で残せることに意味があります。
認知症があっても、一律に「何も決められない」と扱うのではなく、分かりやすい説明や落ち着ける環境を整え、可能な限り本人が意思を形成・表明・実現できるよう支えることが基本です。厚生労働省の意思決定支援についての解説でも、財産を処分する場面を含めて本人の意思を支える考え方が示されています。
支払い忘れ、薬の管理、同じ話の繰り返しなど生活上の変化が気になる場合は、親の様子が「最近おかしい」と感じたら|今日やること・相談先・介護の始め方の巻も参考にしてください。
詐欺や不自然な支出が疑われるとき
次のような変化がある場合は、親を責めたり家族だけで問い詰めたりせず、早めに第三者へ相談します。
- 覚えのない振込みや高額な引出しがある
- 通帳・印鑑・カードの所在が分からない
- 知らない事業者から請求書や商品が届く
- 電話の相手から「家族に話さないで」と言われている
- 生活費が足りないのに不自然な出金が続く
- 贈与や名義変更を誰かが急がせている
契約や悪質商法の相談は、消費者ホットライン「188」から最寄りの消費生活相談窓口につながります。証券口座や特殊詐欺の対策は、証券口座の不正アクセスと特殊詐欺からお金を守る|家族で行う12の対策の巻でもまとめています。
家族だけで抱えず相談する
- 地域包括支援センター:介護、権利擁護、成年後見、虐待、消費者被害などを含む高齢者の総合相談
- 消費生活センター:契約や悪質商法の相談。消費者ホットラインは188
- 社会福祉協議会:日常生活上の金銭管理や福祉サービス利用の支援に関する相談
- 市区町村の成年後見相談窓口:本人だけで契約や財産管理を行うことが難しくなった場合の制度相談
- 金融機関や法律専門職:代理手続き、相続、贈与、不動産など個別の確認
成年後見制度では、財産管理だけを優先するのではなく、本人の意思と生活を支える視点が重視されています。制度の概要は厚生労働省「成年後見はやわかり」で確認できます。
まとめ
- 最初から預金残高や全財産を聞く必要はない
- 収入・支払い・財産と負債の所在・書類の場所から確認する
- 本人の同意を得て、短い対話を何度か重ねる
- 暗証番号やパスワードは共有しない
- 不自然な支出や詐欺が疑われるときは第三者へ相談する
親のお金について話す目的は、親から管理を取り上げることではありません。本人が自分らしく暮らし続けられるよう、必要なときに必要な支援へつなぐためです。
※本記事は、親子間の情報共有、介護、権利擁護、財産管理に関する一般的な情報です。家族間の会話やメモだけで、本人名義の預金・不動産・証券・契約を管理する法的権限が生じるわけではありません。制度や金融機関の取扱いは状況によって異なるため、個別の手続きは地域包括支援センター、市区町村、金融機関、社会福祉協議会、家庭裁判所、弁護士・司法書士などへ確認してください。

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