親の入院や認知症の進行で仕事を休む必要が出たとき、「介護休職を取れば収入はどうなる?」「93日間、自分で介護し続けるの?」と不安になる方は少なくありません。
法律上の正式名称は「介護休業」です。会社が独自に「介護休職」という名称を使うことはありますが、育児・介護休業法の介護休業とは期間・待遇・給付の条件が異なる場合があります。申請前に、どちらの制度かを確認してください。
介護休業は、対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割して取得できる制度です。93日間を家族だけで介護するためではなく、地域包括支援センターへ相談し、介護サービスと家族分担を整えて、仕事へ戻れる体制をつくるために使います。
先に結論
- 介護休業は対象家族1人につき通算93日、3回まで分割できる
- 介護休暇は年5日、対象家族が2人以上なら年10日で、時間単位でも取得できる
- 介護休業中の給与は会社規定による。無給でも、要件を満たせば介護休業給付金の対象になる
- 給付額は原則「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」だが、上限や減額条件がある
- 退職する前に、勤務先・ハローワーク・地域包括支援センターの3か所へ相談する
この記事では、社会福祉士の視点から、介護休業・介護休暇・短時間勤務等の違い、対象者、収入の考え方、2025年の法改正、休業中に整えたいことを、2026年7月時点の公的情報に基づいて整理します。
「介護休業」と会社独自の「介護休職」は同じとは限らない
育児・介護休業法に基づく制度は介護休業です。取得できる期間、対象となる家族、申出方法、不利益な取り扱いの禁止などが法律で定められています。
一方、「介護休職」は日常的に使われる呼び方や、会社が独自に設ける制度名である場合があります。法定の介護休業に加えて長い休職期間を設ける会社もあれば、復職条件や給与の扱いを別に定める会社もあります。
| 確認する言葉 | 主な位置づけ | 最初に確認する資料 |
|---|---|---|
| 介護休業 | 育児・介護休業法に基づく制度 | 法律、厚生労働省の案内、就業規則 |
| 介護休職 | 会社独自の名称・制度である場合がある | 就業規則、休職規程、人事の説明 |
| 介護休暇 | 通院付き添いや手続き等に使える短い休暇 | 法律、就業規則、申出方法 |
| 年次有給休暇 | 理由を限定せず使える有給の休暇 | 残日数、時間単位制度の有無 |
人事へ相談するときは、「介護休職を取りたい」だけでなく、「法定の介護休業と会社独自制度の違い、使える順番、給与・社会保険・復職条件を教えてください」と確認すると誤解を減らせます。
介護休業の対象・期間・回数
対象家族1人につき通算93日、3回まで分割
介護休業は、対象家族1人につき通算93日まで取得でき、3回まで分割できます。93日が毎年付与されるわけではありません。休日を含む暦日で数えるため、取得日数の確認は勤務先へ依頼しましょう。
たとえば、最初の入院・退院調整で14日、在宅生活の再調整で30日、状態変化後の施設検討で49日というように分けることが考えられます。これは使い方の例であり、本人の状態、サービスの開始時期、勤務先との調整で変わります。
対象となる家族
- 配偶者(事実婚を含む)
- 父母、子
- 祖父母、兄弟姉妹、孫
- 配偶者の父母
同居や扶養は要件ではありません。遠方に住む親の介護でも、要件を満たせば対象になり得ます。
「要介護状態」は介護保険の認定だけで決まらない
育児・介護休業法でいう要介護状態は、負傷、疾病、心身の障害により、2週間以上にわたって常時介護を必要とする状態です。介護保険の要介護認定を受けていることだけが条件ではありません。障害児・者や医療的ケアが必要な家族も含まれます。
対象になるか迷う場合は、診断名だけで判断せず、食事、排せつ、移動、服薬、見守りなど、実際に必要な介助を勤務先へ伝えます。会社へ提出する書類や証明の範囲も確認してください。
申出は原則として開始予定日の2週間前まで
法定の介護休業は、原則として開始予定日の2週間前までに申し出ます。会社が労働者に有利な短い期限を設けている場合もあります。急な入院などで間に合わないときは諦めず、人事へ事情を伝えて開始日と利用できる休暇を相談しましょう。
日々雇用される方は対象外です。有期雇用、勤続期間、週の勤務日数などによっても扱いが変わる場合があるため、パート・アルバイトだから対象外と決めつけず、厚生労働省の要件と雇用契約を確認します。
介護休業・介護休暇・短時間勤務等の違い
| 制度 | 法定の主な内容 | 使い方の例 |
|---|---|---|
| 介護休業 | 対象家族1人につき通算93日、3回まで | 退院調整、サービス手配、家族分担の構築 |
| 介護休暇 | 対象家族1人なら年5日、2人以上なら年10日。1日または時間単位 | 通院付き添い、手続き、ケアマネジャーとの面談 |
| 短時間勤務等 | 事業主が短時間勤務、フレックス、時差出勤、介護サービス費用助成等から1つ以上を用意 | 毎日の勤務時間・開始終了時刻を調整 |
| 所定外労働の制限 | 一定の要件で残業免除を請求できる | 夕方の介護やサービス終了時刻に合わせる |
| 時間外労働の制限 | 法定時間外労働を月24時間・年150時間までに制限 | 長時間残業を抑えて両立する |
| 深夜業の制限 | 一定の要件で午後10時~午前5時の勤務を制限 | 夜間の見守りが必要な時期に調整 |
介護休暇は、家族が1人なら「1人につき5日」ではなく、労働者1人あたり年5日です。対象家族が2人以上の場合は年10日です。会社の年度区分や申出方法も確認してください。
介護休業中の給与と介護休業給付金
法律上、休業日の賃金支払いは義務づけられていない
介護休業を取得した日の給与を有給にするか無給にするかは、勤務先の就業規則や給与規程によります。法定の介護休業を取れば自動的に給与が67%支払われるわけではありません。
給付額は原則67%相当だが「手取りの67%」ではない
雇用保険の被保険者で一定の要件を満たす場合、介護休業給付金の対象になります。1支給単位期間の給付額は、原則として次の式で計算されます。
休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
休業開始時賃金日額は、原則として介護休業開始前6か月の賃金を基に計算されます。賞与は含まれません。上限・下限があり、介護休業中に勤務先から賃金が支払われる場合は減額または不支給になることがあります。
| 休業前6か月の平均月額の例 | 給付額の概算例 |
|---|---|
| 15万円程度 | 月10万円程度 |
| 20万円程度 | 月13万4,000円程度 |
| 30万円程度 | 月20万1,000円程度 |
申請は原則として勤務先を経由してハローワークへ行いますが、本人が希望すれば本人申請も可能です。申請期限や必要書類があるため、休業前に人事へ「誰が、いつ、どこへ申請するか」を確認します。
社会保険料・住民税・賞与も確認する
給付金の67%だけで家計を計算しないでください。介護休業には、育児休業と同じ社会保険料免除の仕組みはありません。健康保険・厚生年金保険の本人負担分をどう徴収するか、住民税を給与天引きできない月にどう納めるか、賞与査定や各種手当がどうなるかを勤務先へ確認します。
| 家計で確認する項目 | 勤務先へ聞くこと |
|---|---|
| 休業中の給与 | 有給・無給、手当の有無 |
| 給付金 | 受給見込み、申請担当、支給時期 |
| 社会保険料 | 本人負担額、徴収方法、支払時期 |
| 住民税 | 給与天引きできない期間の納付方法 |
| 賞与・昇給・退職金 | 休業期間が算定へ与える影響 |
| 会社独自制度 | 介護手当、積立休暇、在宅勤務等 |
2025年4月から会社の対応が強化された
2025年4月1日から、介護離職を防ぐため、事業主には主に次の対応が求められています。
- 介護に直面したと申し出た労働者へ、制度を個別に周知し、利用意向を確認する
- 40歳前後の労働者へ、介護休業制度・申出先・給付金を早い段階で知らせる
- 研修、相談窓口、利用事例の提供、利用促進方針の周知のうち1つ以上を行う
- 介護休暇について、継続雇用6か月未満を労使協定で除外する仕組みを廃止する
- 介護中の労働者がテレワークを選べるようにする措置を努力義務とする
テレワークは努力義務であり、すべての職場で必ず利用できる権利ではありません。一方、制度の説明を受けず「うちにはない」と言われた場合は、人事・労務担当者へ再確認し、必要に応じて都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)へ相談できます。
介護休業の93日で整えること
介護休業の目的を「自分がすべて介護する」にすると、復職日に同じ問題が戻ってきます。休業開始時に、復職後も家族だけで抱えずに済む仕組みを目標にします。
1.緊急時の安全と医療を確認する
- 退院日、病状、服薬、受診予定
- 移動、食事、排せつ、入浴、夜間対応で必要な介助
- 転倒、火の不始末、行方不明などの危険
- 緊急連絡先と救急時に伝える情報
2.本人の住所地の地域包括支援センターへ相談する
要介護認定前でも相談できます。遠距離介護では、介護する家族の住所ではなく、原則として本人が住む地域のセンターへ連絡します。入院中は医療ソーシャルワーカーや退院支援担当者にも、仕事へ戻る期限を伝えてください。
3.要介護認定とサービスを調整する
- 要介護・要支援認定の申請
- ケアマネジャーの選定
- 訪問介護、通所介護、短期入所、福祉用具等の検討
- 夜間・休日・サービス休業日の代替方法
- 本人が拒否する場合の理由と試し方
4.家族の役割とお金を見える化する
直接介護だけでなく、通院、買い物、書類、連絡、費用、緊急時対応を分けます。「近くに住む人が全部」にならないよう、遠方の家族も費用負担や連絡調整を担えるか話し合います。
5.復職後の1週間を試運転する
可能なら休業終了前に、勤務している時間帯を想定してサービスを動かします。送迎の遅れ、本人からの頻回電話、急な欠勤者、通院日など、計画どおりにならない場面を確認し、予備の連絡先を決めます。
退職を決める前の7項目
- 法定の介護休業と会社独自制度の両方を確認したか
- 介護休暇、短時間勤務、残業・深夜業の制限を組み合わせられないか
- 介護休業給付金の受給見込みと支給時期を確認したか
- 社会保険料、住民税、賞与を含む休業中の家計を計算したか
- 地域包括支援センターとケアマネジャーへ仕事の状況を伝えたか
- 家族以外の介護サービスを十分に検討したか
- 退職後の収入、健康保険、年金、再就職への影響を書き出したか
退職が必要になる家庭もあります。しかし、疲労と混乱が強い時期に急いで辞表を出すと、後から利用できた制度に気づいても元へ戻せません。緊急対応が落ち着いた後、収入と介護体制を並べて判断します。
会社へ相談するときの伝え方
家族が2週間以上にわたり介護を必要とする見込みです。法定の介護休業、介護休暇、短時間勤務等について、対象要件、申出書、給与・社会保険・給付金、復職手続きを確認したいです。現時点では○月○日から○日間の休業を検討しています。
病名や家族事情を必要以上に詳しく話すのではなく、介護が必要な期間、必要な休み方、仕事上の調整を具体的に伝えます。提出した申出書、会社からの通知、メール、給付金の書類は保管してください。
相談先を使い分ける
| 相談先 | 相談する内容 |
|---|---|
| 勤務先の人事・労務 | 休業・休暇・勤務制度、給与、社会保険、申出書、復職 |
| ハローワーク | 介護休業給付金の受給要件、金額、申請 |
| 都道府県労働局 | 育児・介護休業法、取得拒否、不利益な取り扱い |
| 地域包括支援センター | 介護認定前を含む介護・福祉・医療・生活の総合相談 |
| ケアマネジャー | 復職後も続けられるケアプランとサービス調整 |
| 病院の相談員 | 退院支援、医療と介護の引き継ぎ、在宅生活の準備 |
よくある質問
介護保険の要介護認定がなくても介護休業を取れますか?
介護保険の認定だけが条件ではありません。育児・介護休業法の要介護状態に該当するかで判断します。本人の状態と必要な介助を整理し、勤務先へ確認してください。
パートや有期雇用でも利用できますか?
雇用形態の名称だけで対象外にはなりません。ただし、日々雇用、有期契約の終了見込み、労使協定で除外できる範囲などの要件があります。雇用契約書と厚生労働省の案内を確認します。
93日間は連続して休む必要がありますか?
連続でなくても、対象家族1人につき3回まで分割できます。通算93日をどう配分するかは、退院・サービス開始・状態変化・復職時期を考えて決めます。
介護休暇にも給付金がありますか?
介護休業給付金は介護休業を対象とする制度で、介護休暇へ同じ給付が出るわけではありません。介護休暇中の給与は会社の規定を確認してください。
介護休業中に働くと給付金はどうなりますか?
就業日数や休業中に支払われた賃金によって、減額または不支給になる場合があります。副業等の就業日も確認対象になるため、働く前に勤務先とハローワークへ相談してください。
会社に制度がないと言われたらどうしますか?
会社独自の介護休職がなくても、法定要件を満たす介護休業は別です。人事・労務へ法定制度として再確認し、解決しない場合は都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)へ相談してください。
まとめ|93日は介護を抱える期間ではなく、体制を整える期間
- 法律上の正式名称は介護休業。会社独自の介護休職とは分けて確認する
- 対象家族1人につき通算93日、3回まで分割できる
- 介護休暇は年5日または10日で、時間単位でも取得できる
- 給与は会社規定。給付金は原則67%相当だが上限・減額条件がある
- 社会保険料、住民税、賞与まで含めて休業中の家計を確認する
- 休業中に地域包括支援センター、介護サービス、家族分担を整える
- 退職は制度と復職後の体制を確認してから判断する
今日の一歩は、勤務先の就業規則で「介護休業」を検索し、申出先と給与の扱いを確認することです。同時に、親が住む地域の地域包括支援センターの連絡先も控えておきましょう。
親の介護費と家族の負担を整理するときは「親の介護費用は誰が払う?本人のお金・家族負担・介護離職を防ぐ家計整理」、介護疲れのサインと休み方は「家族介護に疲れたら|限界サイン・相談先・休む方法」もあわせて確認してください。
本記事は2026年7月時点の公的情報を基にした一般的な解説です。制度の対象、給与、給付金、社会保険料、申出方法は、雇用契約、就業規則、休業期間、個別状況によって異なります。休業・退職を決める前に、勤務先、ハローワーク、都道府県労働局などへ確認してください。


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