介護保険の負担限度額認定とは?施設の食費・居住費を軽くする条件と申請手順の巻

介護施設の費用資料を一緒に確認する高齢の親子 介護に関する知識や考え方

結論からお伝えすると、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院やショートステイを利用する方は、世帯の課税状況、本人の年金等の収入、本人・配偶者の預貯金等が基準内なら、「介護保険負担限度額認定」により食費・居住費を軽くできる可能性があります。自動的には適用されないため、住民票のある市区町村へ申請し、交付された認定証を施設へ提示することが基本です。

2026年8月からは、第2段階と第3段階①を分ける収入基準が82万6,500円となり、食費や第3段階②の居住費の一部も変わりました。以前の表をそのまま使わず、次の3点を順に確認しましょう。

  1. 利用する施設・サービスが制度の対象か
  2. 所得要件と預貯金等の要件を両方満たすか
  3. いつまでに、どの書類を市区町村へ出すか

この記事では、2026年10月に確認した公的情報をもとに、対象条件、負担額、申請手順を整理します。

負担限度額認定は食費・居住費の「1日あたりの上限」を決める制度

介護保険施設では、介護サービス費の1〜3割負担とは別に、食費と居住費を支払います。これらは原則として施設との契約で決まりますが、低所得の方まで同じ負担では施設を利用しにくくなるため、所得・資産が一定以下の方には1日あたりの負担限度額が設けられています。

限度額と基準費用額等との差額は、介護保険から施設へ「特定入所者介護(予防)サービス費」として給付されます。通常は認定証を施設に提示し、認定された限度額までを支払います。

対象となる主なサービスは次のとおりです。

  • 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)・地域密着型特別養護老人ホーム
  • 介護老人保健施設
  • 介護医療院
  • 短期入所生活介護・短期入所療養介護(介護予防を含むショートステイ)

有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、認知症グループホームなどには、そのまま使えません。介護保険上のサービス種類を確認してください。特養の費用全体は、特別養護老人ホームの入所条件・費用・申込みの流れでも整理しています。

対象になるには所得と預貯金等の両方を確認する

原則として、生活保護受給者等を除き、次の所得要件と資産要件の両方を満たす必要があります。

所得要件

本人と同じ住民票上の世帯員全員が市区町村民税非課税であることが基本です。さらに、配偶者は住民票上の世帯を分けていても判定に含まれます。「夫婦で世帯分離をしたから配偶者の課税状況は関係ない」とはならない点に注意してください。

段階判定の年金収入等には、遺族年金・障害年金などの非課税年金も含みます。2026年8月以降の主な区分は次のとおりです。

利用者負担段階主な所得条件預貯金等の上限(単身/夫婦)
第1段階生活保護受給者、または非課税世帯の老齢福祉年金受給者生活保護は要件なし。老齢福祉年金受給者は1,000万円/2,000万円
第2段階非課税世帯で、年金収入等+その他の合計所得金額が82万6,500円以下650万円/1,650万円
第3段階①非課税世帯で、同合計が82万6,500円超120万円以下550万円/1,550万円
第3段階②非課税世帯で、同合計が120万円超500万円/1,500万円

65歳未満の第2号被保険者は、利用者負担段階にかかわらず、預貯金等の上限は単身1,000万円、夫婦2,000万円です。収入や所得の計算には調整があるため、年金の振込額だけで段階を断定せず、市区町村に確認しましょう。

預貯金等に含めるもの

申告対象は、普通・定期預金だけではありません。一般に次のものを合計します。

  • 本人と配偶者名義の普通預金、定期預金、積立預金
  • 株式、国債、地方債、社債などの有価証券
  • 投資信託
  • 残高から時価を確認できる金・銀など
  • 手元の現金、いわゆるタンス預金

借入金や住宅ローンなどの負債は、契約書等で確認できれば差し引ける場合があります。配偶者分は別世帯でも対象です。ネット銀行や複数の証券口座も含め、申告漏れがないよう一覧にしてください。

2026年8月以降の食費・居住費はいくらになる?

食費の負担限度額は、施設入所とショートステイで一部異なります。

段階施設の食費(日額)ショートステイの食費(日額)
第1段階300円300円
第2段階390円600円
第3段階①680円1,030円
第3段階②1,420円1,360円

居住費・滞在費は、施設の種類と部屋の形で変わります。

居室の種類第1段階第2段階第3段階①第3段階②
多床室・特養等0円430円430円530円
多床室・老健・医療院(室料あり)0円430円430円530円
多床室・老健・医療院等(室料なし)0円430円430円430円
従来型個室・特養等380円480円880円980円
従来型個室・老健・医療院等550円550円1,370円1,470円
ユニット型個室的多床室550円550円1,370円1,470円
ユニット型個室880円880円1,370円1,470円

例えば第2段階の方が特養の多床室を30日利用した場合、食費11,700円、居住費12,900円、合計24,600円が一つの目安です。

これは食費・居住費だけの計算です。介護サービス費、医療費、理美容、日用品などは別です。利用日数や施設との契約額でも変わります。老健の費用項目は、介護老人保健施設の入所条件・リハビリ・費用も参考にしてください。

高額介護サービス費とは別の制度

負担限度額認定と高額介護サービス費は、どちらも負担を軽くする制度ですが、対象が違います。

制度主な対象負担を抑える方法
負担限度額認定施設・ショートステイの食費、居住費・滞在費認定段階ごとの日額までにする
高額介護サービス費介護保険サービスの1〜3割負担月額上限を超えた分を支給する

施設の請求書は、「介護保険一部負担」「食費」「居住費」「その他実費」に分けます。詳しくは、高額介護サービス費の自己負担上限・対象外費用・申請手順をご覧ください。

申請から施設へ提示するまでの6ステップ

1.市区町村の最新案内と様式を確認する

申請先は、介護保険被保険者証を発行した市区町村です。窓口・郵送・オンラインのどれが使えるか、必要書類、郵送時の受付日を確認します。施設が市外でも原則は保険者へ申請します。

2.本人と配偶者の資産資料をそろえる

申請書と同意書に加え、本人・配偶者の通帳や有価証券等の写しを用意します。銀行名・支店名・口座番号・名義、直近残高、定期預金が分かるページが一般的です。ネット口座は残高画面、負債は契約書等を準備します。

3.申請書と同意書を記入する

本人の基本情報、配偶者、入所先、収入・資産状況などを記入します。同意書は、市区町村が必要に応じて金融機関へ照会するためのものです。家族が手続きする場合は、委任状の要否も確認します。

4.できるだけ利用月内、できれば利用前に提出する

認定の効力は、原則として市区町村が申請を受け付けた月の1日からです。前月以前まで自由にさかのぼれる制度ではありません。月末に郵送すると到着が翌月になり、適用開始も翌月となる場合があるため、入所やショートステイの予定が決まったら早めに提出しましょう。

5.認定証を施設へ提示し、請求書を確認する

認定証を施設へ提示し、いつの利用分から反映されるか確認します。認定待ちの場合も施設へ伝え、認定後は請求書の食費・居住費が認定証と利用日数に合うかを見ます。

6.毎年の更新と状況変更を忘れない

適用期間は一般に8月1日から翌年7月31日までで、更新申請が必要です。自動更新とは限りません。配偶者や世帯の課税状況、預貯金等が変わったときも市区町村へ連絡します。

申請前に気をつけたい5つの点

  1. 世帯分離だけで対象になるとは限らない:配偶者は別世帯でも課税・資産判定に含まれます。
  2. 非課税年金も段階判定に含む:遺族年金や障害年金の受給状況も正しく申告します。
  3. 預貯金は通帳残高だけではない:証券、投資信託、現金なども確認します。
  4. 認定証は保管するだけでは足りない:利用先へ提示し、請求への反映を確認します。
  5. 対象外でも相談を終えない:課税世帯でも、夫婦の一方が施設へ入り、残る家族の生活が難しくなるなど一定の要件を満たせば、特例減額の対象となる場合があります。市区町村へ「課税世帯の特例減額も確認したい」と伝えてください。

虚偽の申告や申告漏れが判明すると、給付分の返還や追加徴収につながることがあります。「この口座も対象か分からない」というときは自分で除外せず、資料を持って窓口へ確認する方が安全です。

よくある質問

施設へ入る前でも申請できますか?

入所・利用予定が分かる資料を求めるか、入所後に受け付けるかなど自治体で取扱いが異なります。予定が決まった時点で、保険者と施設へ相談してください。少なくとも利用月を過ぎてから慌てないよう、必要書類だけでも先に確認します。

申請が月末に間に合わなかった場合、前月分も軽くなりますか?

原則は受付月の1日からです。前月以前へ自由に遡及するものではありません。郵送は発送日ではなく到着日を受付日とする自治体もあるため、月末は特に注意が必要です。

認定されたら施設費用はすべて上限内になりますか?

いいえ。認定の対象は食費と居住費・滞在費です。介護サービス費、医療費、日用品、理美容などは別です。入所前には料金表を受け取り、親の年金と介護費用の収支を確認する方法を参考に、毎月の総額で見通しを立てましょう。

迷ったときの相談先

  • 市区町村の介護保険担当窓口:対象判定、申請書、更新、認定結果
  • 施設・ショートステイの相談員や事務担当:サービス種類、居室区分、料金、認定証の反映
  • 担当ケアマネジャー:ショートステイの予定、費用を含めたケアプランの調整
  • 地域包括支援センター:申請先が分からない、家計や施設選びも含めて相談したい場合

介護保険被保険者証、施設の料金表、年金額、本人・配偶者の資産一覧を手元に置くと相談しやすくなります。認定後も払える総額か、更新時期まで管理できるかを確認しましょう。

まとめ|利用月より前に要件と書類を確認しよう

介護保険負担限度額認定は、対象となる介護保険施設やショートステイの食費・居住費を、所得段階に応じた日額までに抑える制度です。世帯全員と別世帯の配偶者の課税状況、本人の年金等、本人・配偶者の預貯金等を確認し、市区町村へ申請します。

2026年8月からは一部の所得基準と負担額が変わっています。古い認定証や料金表だけで判断せず、最新様式で早めに申請し、交付後は施設へ提示してください。食費・居住費以外の費用も含めた請求総額を確認し、家計が厳しいときは課税世帯の特例減額や他の負担軽減制度についても市区町村へ相談しましょう。

参考にした公的情報

注意:本記事は2026年10月10日時点で確認した一般的な制度情報です。所得・資産の判定、必要書類、受付日、対象施設、施設との契約額、自治体独自の軽減は個別に異なるため、申請前に介護保険被保険者証を発行した市区町村と利用施設の最新案内をご確認ください。

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