介護する家族が急に入院したら、最初に決めるのは今後の介護方針ではありません。介護される本人が「今日安全に過ごせる場所」と、食事・排せつ・服薬などを「今夜まで誰が支えるか」です。
本人に担当ケアマネジャーがいれば、まず「主介護者が本日入院し、退院日は未定。今日から介護できない」と伝えます。担当者がいない、連絡がつかない、介護保険を利用していない場合は、本人の住所地を担当する地域包括支援センターか、市区町村の高齢福祉・介護保険窓口へ相談します。
この記事では、主介護者の予定外の入院で当日から支援に穴が開く場面に限定し、連絡順、一時的な支援、引継ぎメモ、薬・お金・鍵・ペットの確認を整理します。
最初の30分は本人の安全と今夜の介護を確認する
主介護者が救急搬送された場合、救急隊や病院職員へ「自宅に介護が必要な人が残っている」と伝えます。病院が本人の介護をすべて手配できるわけではありませんが、事情を誰にも知らせないまま入院する事態を防げます。介護者が話せなければ、家族や発見者が伝えます。
次に、本人がどこにいて、一人で何時間過ごせるかを確認します。意識や呼吸がおかしい、転倒して動けない、食事や水分が取れないなど、本人にも緊急性があれば119番を優先します。行方不明や事件の危険があれば110番です。
- 本人は一人で移動、排せつ、食事、水分摂取ができるか
- 今日の薬はいつ、何を、どのように飲む予定か
- 認知症による外出、火の不始末、転倒、誤嚥などの心配があるか
- 今日来る訪問介護、訪問看護、配食、通所送迎などがあるか
- 自宅へ入れる人と、鍵の場所を知る人がいるか
緊急時に連絡する順番
- 担当ケアマネジャー:介護者が対応できない期間、今日必要な支援、本人の状態を伝え、ケアプランの変更や事業所への連絡を相談します。24時間対応や空床確保が必ずできるとは限りません。
- 今日利用する事業所:訪問介護、訪問看護、デイサービスなどへ、介護者不在と連絡窓口の変更を伝えます。誰がどこへ連絡したかを一覧に残します。
- 地域包括支援センター・市区町村:担当者がいない、今夜の支援が決まらない場合は、本人の住所地の窓口へ「今日から介護者不在」と伝えます。
- 親族・近隣の協力者:食事を届ける、担当者の到着まで見守るなど、頼む内容と終了時刻を限定します。身体介護、薬の判断、通帳管理などを、経験のない人へ曖昧に任せません。
- 入院先の相談窓口:看護師や医療ソーシャルワーカーへ、自宅に支援が必要な人がいることを伝えます。本人側の調整窓口はケアマネジャーや市区町村です。
ケアマネジャーが調整できる範囲や、夜間・休日の連絡方法は、ケアマネジャーの役割と相談のコツでも解説しています。留守番電話になった場合は、本人の氏名、介護者が入院した日時、今夜困ること、折り返し先を短く残し、同時に市区町村の窓口も確認します。
入院当日から24時間の動き方
| 時点 | 決めること | 確認のポイント |
|---|---|---|
| 発生直後 | 本人の居場所と安全、救急対応の要否 | 一人にできる時間を楽観的に見積もらない |
| 最初の1〜2時間 | 連絡責任者、今日の食事・排せつ・服薬・見守り | 誰が何時に訪問するかまで決める |
| 当日中 | 今夜の宿泊場所または夜間支援 | 自宅継続か短期入所かをケアマネジャー等と調整する |
| 24時間以内 | 介護者の入院見込みと数日分の支援 | 退院日を決めつけず、次の見直し日時を置く |
家族の代表窓口を一人決め、連絡記録には「時刻・相手・決まったこと・未定のこと」を残します。入院期間が不明でも、まず今夜、その次に3日程度と区切ると調整しやすくなります。
自宅でつなぐか、ショートステイを探すか
短期入所生活介護や短期入所療養介護、いわゆるショートステイは、本人が施設へ短期間宿泊し、介護や生活支援を受けるサービスです。家族の身体的・精神的負担を軽くする目的もあります。介護者の急病や入院は利用を相談する理由になりますが、希望した当日に必ず入れる制度ではありません。
| つなぎ方 | 向いている状況 | 確認すること |
|---|---|---|
| 訪問・通所を増やして自宅で過ごす | 夜間を一人で安全に過ごせる、住み慣れた環境を保ちたい | 食事、排せつ、服薬、夜間、緊急時の空白 |
| 通常のショートステイ | 宿泊を含む支援が必要で、受入先と契約を調整できる | 空き、送迎、医療対応、費用、必要書類、持ち物 |
| 自治体独自の緊急短期入所 | 介護者の急病など、地域の対象要件に該当する | 制度の有無、対象、申込先、利用日数、空床 |
| 親族宅などで一時的に過ごす | 本人が環境変化に対応でき、必要な介助を確保できる | 段差、薬、寝具、トイレ、送迎、家族の限界 |
ショートステイの空き、送迎、必要な医療処置への対応は施設ごとに異なります。医師の情報提供書、薬の内容、事前契約などを求められる場合もあります。介護者が病院へ行く前に本人を施設へ連れて行けるとは限らないため、移動を誰が担うかも確認します。種類、費用、利用日数、持ち物は、ショートステイの利用方法にまとめています。
自治体によっては、介護者の急病時に緊急ショートステイを設けています。未認定者を対象に含む例もありますが全国共通ではありません。市区町村へ、通常の短期入所と自治体独自の緊急受入れの両方を尋ねます。
引継ぎメモは「一日の生活」が分かるように作る
要介護度と病名だけでは、代わりの支援者は動けません。完璧な書類を作ろうとせず、今日必要な情報から一枚にまとめます。分からない項目は推測せず「未確認」と書き、作成日時と記入者を残します。
- 基本情報:氏名、生年月日、住所、要介護度、認定期間、負担割合
- 一日の流れ:起床、食事、排せつ、入浴、就寝の時間と介助方法
- 医療:主治医、薬局、病名、アレルギー、服薬、医療処置、受診予定
- 安全上の注意:転倒、誤嚥、徘徊、火気、食事形態、避けたい対応
- 本人の希望:落ち着く声かけ、嫌がること、続けたい習慣、意思の伝え方
- 支援者:ケアマネジャー、利用事業所、家族の連絡順、連絡してよい範囲
- 住まい:鍵、福祉用具、冷暖房、ペット、ごみ、支払い期限が近い物
メモは関係者全員へ無制限に配らず、支援に必要な範囲だけ共有します。マイナンバー、銀行の暗証番号、カードの暗証番号、インターネットのパスワードは書きません。緊急連絡表を平時から準備する方法は、離れて暮らす親の見守りと緊急時対応でも確認できます。
薬・お金・鍵・ペットは別々に確認する
服薬はお薬手帳と現物を照合する
お薬手帳、薬剤情報提供書、現在の薬、かかりつけ薬局を確認し、服用時刻などの指示をそのまま伝えます。家族が量を変更せず、飲み忘れや重複が疑われる場合は主治医、薬局、訪問看護などへ確認します。
お金は必要額と領収書を分ける
食費、日用品、移動費、施設への支払いなど、直近に必要な用途と金額を一覧にします。立て替えた人、日付、用途、金額を記録し、領収書を残します。本人のキャッシュカードと暗証番号を当然のように第三者へ渡したり、ケアマネジャーへ預金管理を依頼したりはできません。長期化し、本人が金銭管理できない場合は、市区町村や地域包括支援センターへ権利擁護を含めて相談します。
鍵は本数・受渡し・返却を記録する
誰が何本持ち、何時に受け取り、いつ返すかを記録します。玄関、勝手口、集合住宅の入口など鍵の種類も分けます。屋外の隠し場所を多人数へ伝えるのは避け、事業所へ預ける場合は契約上の管理方法を確認します。本人が一時的に自宅を離れるなら、戸締まり、火気、冷蔵庫、郵便物も確認します。
ペットの世話は本人の介護と別に手配する
本人が施設へ移る場合も、ペットを一緒に受け入れてもらえるとは限りません。種類、頭数、餌、散歩、薬、かかりつけ動物病院、世話を頼める人を確認します。親族、知人、ペットホテル、動物病院などへ相談し、鍵の受渡しと費用を記録します。本人の気持ちにも配慮し、預け先とおおよその期間を説明します。
今夜の受入先が見つからないとき
希望地域を少し広げる、数日だけ別の施設を利用する、訪問と通所を増やす、家族が対応する時間を限定するなど、複数の方法を組み合わせます。ただし、医療処置、食事形態、移乗方法など安全に関わる条件を、空きがないからと省いてはいけません。
通常のサービスで調整できなければ、市区町村へ緊急受入れや一時的な生活支援の有無を確認します。本人に治療が必要でないのに、介護者不在だけを理由として医療機関への入院を当然の代替先にすることはできません。本人にも急変がある場合は、介護の受入先探しとは分けて医療機関へ相談します。
親族が一時的に穴を埋める場合は、「明日の午前まで」「食事と見守りだけ」のように期限と役割を決めます。家族支援が長く見込めない場合は、家族に頼れない介護の支援体制を参考に、相談、介護、医療、金銭管理、緊急対応を一人へ集中させない仕組みへ切り替えます。
落ち着いたら再発に備えて決めること
- 主介護者が電話できない場合の第二・第三連絡先
- 平日昼間、夜間、休日それぞれの相談先
- 緊急時に利用を相談するショートステイ候補と移動方法
- 本人の医療・介護情報、薬、鍵、ペット情報の保管場所
- 主介護者が担っていた支援と、ほかの人やサービスへ移す部分
主介護者が退院しても、すぐ以前と同じ介護量へ戻せるとは限りません。退院日だけでなく、移動、持ち上げ、夜間対応、運転など医師から制限された動作を共有し、ケアプランを見直します。「退院したから元通り」ではなく、介護者の療養を含めて本人の生活を組み直します。
よくある質問
当日でもショートステイへ入れますか?
空床、職員体制、本人の状態、医療対応、契約や情報提供の状況によります。緊急枠を設ける自治体もありますが、当日利用を保証するものではありません。ケアマネジャーと市区町村へ同時に相談し、自宅でつなぐ方法も並行して確認します。
本人が短期入所を嫌がる場合はどうしますか?
「施設へ行く」とだけ伝えず、介護者の治療中に安全を保つための一時利用であること、期間、持参できる物、連絡方法を説明します。本人の不安や拒否の理由を確認し、自宅支援の追加も比較します。ただし生命・身体に差し迫った危険がある場合は、通常の説得だけで待たず、市区町村や医療・救急へ相談します。
要介護認定がなくても相談できますか?
地域包括支援センターや市区町村への相談はできます。介護保険のショートステイは原則として認定等が必要ですが、自治体独自の緊急事業では未申請者などを対象に含む例もあります。地域差が大きいため、利用できると決めつけず本人の住所地へ確認してください。
入院先の病院にすべて任せられますか?
病院には自宅の事情を必ず伝えますが、介護される本人のサービス調整は、本人側のケアマネジャー、地域包括支援センター、市区町村が中心です。病院の医療ソーシャルワーカーには、介護者の治療・退院見込みと家庭事情をつなぐ相談相手として協力を求めます。
まとめ
主介護者が急に入院したら、本人の安全を確認し、担当ケアマネジャー、今日利用する事業所、地域包括支援センター・市区町村の順で連絡します。最初から長期方針を決めず、今夜、3日程度、その後という順に支援をつなぎます。
ショートステイは有力な選択肢ですが、当日利用が保証されるわけではありません。自宅サービスの臨時調整や自治体独自の緊急受入れも確認します。引継ぎは本人の一日の生活が分かるようにし、薬、お金、鍵、ペットを別々に整理してください。主介護者の治療を守りながら本人の生活を続けるには、家族一人ではなく、介護・医療・行政の連絡線を作ることが大切です。
参考にした公的情報
- 厚生労働省「短期入所生活介護の概要・基準」
- 介護サービス情報公表システム「短期入所療養介護」
- 厚生労働省「地域包括ケアシステム/地域包括支援センター」
- 豊島区「緊急ショートステイ」
- 大阪市「認知症高齢者緊急ショートステイ」
- 東京都北区「救急医療情報キット」
※本記事は2026年10月4日時点の公的情報を基にしています。緊急受入れ制度、窓口、対象条件、空床、費用は自治体や事業所で異なります。実際の利用は、本人の担当ケアマネジャー、地域包括支援センター、市区町村、医療機関へ確認してください。

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