結論からお伝えすると、利用中の介護事業所から閉鎖や休止を告げられたら、家族だけで次の事業所を探し始めるのではなく、「最後に利用できる日」「止めると生活や安全に影響する支援」「引継ぎを調整する担当者」の3点を先に確認します。そのうえで、在宅サービスなら担当ケアマネジャーと現在の事業所、施設サービスなら施設の相談員や市区町村と連携し、代替先を探します。
介護保険法上の指定を受けた介護サービス事業者には、休止・廃止後も利用を希望する人へ必要なサービスが続くよう、関係者との連絡調整や他事業所の紹介などを行うことが制度上求められています。ただし、同じ曜日・時間・職員・料金で必ず引き継げるという意味ではありません。終了日から逆算し、優先順位をつけて動くことが大切です。
この記事では、訪問介護、通所介護、福祉用具貸与などの在宅サービスを中心に、閉鎖の知らせを受けた直後の確認事項、相談する順番、引き継ぐ情報、契約・鍵・福祉用具・最終請求の確認までを整理します。入所施設そのものの閉鎖では住み替えも伴うため、施設の相談員と市区町村へ早めに個別相談してください。
閉鎖の知らせを受けた日に確認する6項目
まず口頭の説明だけで判断せず、お知らせやメールなど、終了日と対象サービスが分かるものを保管します。次の6項目を一枚のメモにまとめると、ケアマネジャーや家族との共有がしやすくなります。
- 閉鎖・休止・運営法人の変更のどれか:事業所がなくなるのか、一時休止なのか、別法人へ事業が引き継がれるのかを確認します。
- 最後に利用できる日:事業所全体の終了日だけでなく、本人への最終サービス日も確認します。
- 影響するサービス:曜日、時間、回数、送迎、食事、入浴、服薬確認など、現在受けている内容を書き出します。
- 代替先の調整担当者:事業所の窓口、担当ケアマネジャー、施設の相談員の氏名と連絡方法を確認します。
- 引継ぎ情報の扱い:何を、どの候補先へ、いつ共有するのか、本人の同意をどのように確認するのかを聞きます。
- 精算と返却:最終請求、前払金や預り金、鍵、連絡帳、福祉用具、施設に置いた私物の扱いを確認します。
「来月で終わります」と言われても、利用者が行政への届出状況を調べることから始める必要はありません。まず現在の事業所へ、代替先の紹介やケアマネジャーとの調整予定を具体的に尋ねましょう。説明を聞いた日時、相手、決まったこと、未定のことを記録しておくと、連絡の行き違いを防げます。
事業所にはサービス継続のための調整が求められる
厚生労働省の通知では、介護事業者が事業を休止・廃止するときは、原則として予定日の1か月前までに指定権者へ届け出るとともに、引き続きサービスを希望する利用者へ、近隣事業者の紹介や関係者との連絡調整などの措置を講じる必要があるとされています。
ここで注意したいのは、「利用者には必ず1か月前に通知される」「行政が同じ条件の事業所を必ず用意する」とまではいえないことです。経営状況の急変、災害、職員不足などで時間が限られる場合もあり、地域によって空き状況も異なります。また、紹介された事業所と自動的に契約が移るわけではありません。本人や家族は説明を受け、候補先を比較して契約します。
事業所から十分な説明がない、終了日が迫っているのに調整が進まない、連絡が取れない場合は、市区町村の介護保険担当窓口や事業所を指定する自治体へ相談します。制度の仕組みを調べてからでなくても、「何月何日に、どの事業所から、いつ終了すると言われたか」を伝えれば相談の入口になります。
止まると困る支援から優先順位を決める
すべてを一度に同じ条件で探そうとすると、候補が見つかりにくくなります。まず本人の安全と生活を保つため、空白期間を作れない支援をケアマネジャーや医療職と整理します。
| 優先して確認すること | 具体例 | 調整の視点 |
|---|---|---|
| 生命・健康への影響 | 服薬、医療的ケア、食事、水分、排せつ | 終了翌日から誰が担うかを先に決める |
| 転倒や事故の予防 | 移乗、入浴、外出、認知症の見守り | 時間帯と必要な介助方法を伝える |
| 家族の不在・就労 | 日中独居、送迎、通所、泊まり | 家族が対応できない曜日を明確にする |
| 住環境の維持 | 福祉用具、ベッド、手すり、鍵の預かり | 返却と新契約の間に空白を作らない |
例えば、週2回の訪問介護を同じ時間に確保できなくても、朝の排せつ介助を優先し、掃除は一時的に別の曜日へ動かせることがあります。反対に、家族が出勤する日の通所や、夜間の医療的ケアは簡単にずらせない場合があります。何を減らせるかを家族だけで決めず、本人の状態と介護者の負担を含めて相談しましょう。
相談先は利用しているサービスで変わる
- 訪問介護・デイサービスなどの在宅サービス:担当ケアマネジャーへ連絡し、現在の事業所と代替候補の間を調整してもらいます。
- 居宅介護支援事業所そのものが閉鎖:現在のケアマネジャーへ引継ぎ先を確認し、決まらない場合は市区町村や地域包括支援センターへ相談します。
- 施設・グループホームなどの入所系サービス:施設の相談員へ、退去期限、転居候補、費用、診療情報や荷物の引継ぎを確認し、市区町村にも早めに相談します。
- 担当者が分からない、調整が止まっている:市区町村の介護保険窓口、地域包括支援センター、事業所の指定権者が相談先になります。
ケアマネジャーが何を調整する人なのか、変更時に何を確認するのかは、ケアマネジャーの役割と担当変更の手順でも解説しています。複数の人へ連絡するときは、家族の代表窓口を一人決め、同じメモを共有すると混乱を減らせます。
後継候補は「開始できる日」から絞る
- 現在の事業所とケアマネジャーから候補を聞く
同じ地域・サービス種別の事業所、受入れを打診済みか、いつから利用できるかを確認します。 - 公表システムで地域の候補を補う
介護サービス情報公表システムでは、地域やサービス種別から事業所を検索し、営業時間、提供地域、特色、職員や利用者の状況などを確認できます。 - 必須条件と開始日を確かめる
必要な介助、曜日・時間、医療や認知症への対応、送迎範囲、費用、緊急時の連絡方法を伝え、終了翌日から空白がないかを確認します。
公表システムの掲載情報は、確認時点の受入れを保証するものではありません。最後は電話や面談で確かめます。詳しい比較項目や見学時の質問は、後継事業所を比較するときの7項目と見学質問にまとめています。閉鎖時は選択肢が限られても、説明を受けずに急いで契約せず、最初の利用日と譲れない条件だけは確認しましょう。
引継ぎは「本人の一日」が伝わる情報をそろえる
診断名や要介護度だけでは、次の事業所が同じ支援を再現できません。次の情報を、古い事業所、ケアマネジャー、本人・家族で確認します。
- ケアプラン、サービス利用票、現在の曜日・時間・支援内容
- 移動、食事、排せつ、入浴、着替えなど、できることと介助が必要なこと
- 服薬、主治医、受診予定、アレルギー、医療的ケア、急変時の連絡方法
- 認知症の症状、意思の伝え方、落ち着きやすい声かけ、避けたい対応
- 転倒、誤嚥、行方不明などの注意点と、これまでの予防方法
- 本人の希望、生活習慣、家族の連絡順、緊急連絡先
個人情報は、候補になり得るすべての事業所へ無条件に渡すものではありません。本人に説明し、共有する目的、相手、情報の範囲を確認します。本人が意思を伝えにくい場合も、家族だけで進めず、本人の反応やこれまでの希望を尊重しながら担当者と確認しましょう。
情報収集の考え方は、介護情報を場面別に集める方法と相談先でも整理しています。書類だけでなく、普段の様子を知る職員から新しい担当者へ申し送りできるかも確認すると安心です。
契約・お金・鍵・福祉用具も区切りをつける
サービスが途切れないことに気を取られると、古い契約の終了処理が後回しになりがちです。最終利用日、解約日、最終請求月、口座振替が止まる時期、未払い・返金・預り金を確認し、領収証や精算書を保管します。新しい事業所では、利用開始日、自己負担、加算、保険外費用、キャンセル料を確認します。
訪問サービスで鍵を預けている場合は、返却日と受取人を記録します。通所先や施設に置いた衣類、薬、補助具、連絡帳も一覧にします。福祉用具貸与事業所が閉鎖する場合は、ベッドなどを先に返して生活に空白が生じないよう、新しい用具の搬入日と古い用具の回収日を調整してください。契約期間と費用の扱いも両事業所へ確認します。
介護保険サービスは、説明を聞いて契約することが基本です。利用開始までの一般的な流れは、ケアプラン作成から事業所との契約までの手順で確認できます。
終了日から逆算したチェックリスト
| 時期 | 行うこと |
|---|---|
| 知らせを受けた日 | 終了日、影響する支援、担当窓口、説明内容を記録する |
| できるだけ早く | ケアマネジャーへ連絡し、空白にできない支援と候補を整理する |
| 候補が出たら | 条件・費用・開始日を比較し、情報共有への同意を確認する |
| 最終利用日前 | 新契約、ケアプラン、申し送り、鍵・用具・私物の移行を確認する |
| 切替え後 | 初回サービスの内容、本人の様子、旧事業所の最終精算を確認する |
切替え後も、最初から以前と同じように進むとは限りません。初回から数回は、時間、支援内容、本人の疲れや不安、家族への連絡を確認し、必要ならケアマネジャーへ伝えます。
代替先がすぐに見つからないとき
希望する曜日や時間を少し広げる、複数の事業所で役割を分ける、一時的に別のサービスを組み合わせるなど、ケアプランを見直す方法があります。必要に応じて短期入所などを検討する場合もありますが、本人の状態、利用条件、空き、費用があるため、必ずケアマネジャーや市区町村と相談します。
家族が一時的に担う場合も、「何日まで」「どの支援だけ」と期限と範囲を決めます。無期限に家族が穴を埋めると、仕事や体調に影響し、介護そのものが続かなくなるためです。食事、排せつ、服薬、医療的ケアなどにすぐ危険が生じる状態なら、通常の候補探しだけで待たず、主治医、訪問看護、市区町村、必要時は救急相談などへ状況を伝えてください。
よくある質問
紹介された事業所と必ず契約しなければなりませんか?
紹介は候補をつなぐためのもので、内容に同意せず自動的に契約が成立するものではありません。開始日に間に合うかだけでなく、必要な支援、費用、連絡方法を確認して選びます。
同じ職員や利用曜日を引き継げますか?
事業譲渡などで職員が移る場合はありますが、必ず同じ人が担当するとは限りません。曜日、時間、送迎、担当者も候補先の体制で変わります。譲れない条件と調整できる条件を分けて伝えましょう。
ケアプランは作り直しになりますか?
事業所だけが変わる場合でも、ケアプランやサービス利用票の変更が必要となります。変更理由と新しい計画の説明を受け、本人の希望が反映されているか確認します。
まとめ
介護事業所の閉鎖を告げられたときは、終了日と生活に欠かせない支援を確認し、現在の事業所と担当ケアマネジャーへ代替先の調整を依頼します。事業者には継続のための便宜を図ることが求められていますが、同じ条件がそのまま引き継がれるとは限りません。
次の事業所は、開始日、必要な介助、曜日・時間、費用、緊急時対応を同じ条件で比較します。ケアプランだけでなく、本人の一日の過ごし方、医療、注意点、希望を引き継ぎ、旧契約の精算、鍵、福祉用具、私物まで確認しましょう。調整が進まないときは家族だけで抱えず、市区町村や地域包括支援センターへ早めに相談することが大切です。
参考にした公的情報
- 厚生労働省「介護保険法及び老人福祉法の一部を改正する法律等の施行について」
- 厚生労働省「介護保険法」
- 厚生労働省「平成21年5月1日から介護保険法が変わります」
- 介護サービス情報公表システム「介護サービス情報公表制度とは」
- 介護サービス情報公表システム「事業所を探したい」
- 厚生労働省「地域包括ケアシステム」
※本記事は2026年9月時点の公的情報を基にしています。自治体やサービス種別によって手続き・相談先が異なる場合があります。実際の閉鎖日、契約、受入れ状況は、現在の事業所、担当ケアマネジャー、市区町村へ確認してください。

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